2013.09.18 wed

新聞1面トップ 2013年9月18日【解説】国家の物語、国民の物語

新聞1面トップ 2013年9月18日【解説】国家の物語、国民の物語


【リグミの解説】

集団的自衛権の議論と自衛隊の現場感覚のズレ
自民党が進めているいくつかの施策は、考え方や価値観から問い直す必要があります。改憲、集団的自衛権の憲法解釈変更、特定秘密保護法案の3つは特に重要なテーマです。今回は、集団的自衛権に焦点を当てます。
 
安倍首相は、集団的自衛権の行使解禁に意欲を示しています。集団的自衛権は、「自国と密接な関係にある国が攻撃された際に、自国への攻撃と見なして反撃する権利」を指しますが、これについて毎日新聞が興味深い記事を掲載しています。
 
安倍首相は、「現実とかけ離れた建前論に終始し、そのしわよせを現場の自衛隊員に押し付けてはならない」と発言しています。しかし、この発言の具体的意味は語られておらず、自民党幹部は、「首相が集団的自衛権で、何をやりたいのかがよく分からない」と困惑しています。
 
今日から始まった毎日の連続企画記事「どう動く 集団的自衛権」で、自衛隊幹部の多くは集団的自衛権を行使しなくても、個別的自衛権や自衛隊法の範囲内で十分に有事対応できると考えていると指摘しています。集団的自衛権の行使容認に緊急性はないというのが自衛隊の現場感覚だとしています。
 
「戦後」そして「戦前」の問い直し
では、安倍首相は何を目指しているのでしょうか。「首相は『対等な日米関係』を模索している」というのが毎日新聞の見立てです。具体的には、日米安保条約の「片務性」を解消することで、米国に従属する国家から「双務性」のある対等な国家にしたい、ということのようです。これは、大きな視点でとらえると、「戦後」を変えたいということだと解釈できます。
 
このことと、安倍首相が「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」と4月23日の参院予算委で発言したことを合わせて考える必要があります。国際ジャーナリストの土野繁樹氏は、国連の侵略定義を例示し、安倍首相の発言の問題点を指摘しています。安倍氏は「戦前」を変えたいという意図も持っているのでしょうか(参照:「戦争の記憶」)。
 
 
理念主義と現実主義
安倍首相は、重要な政策実行に際しては、現実主義の対応をすると言われます。安倍氏は同時に、抽象的な理念を強く持つ政治家とも言われます。政策の進め方を見ると、自分の価値観や考え方、理念に沿った状況を積み上げていく手法が目立ちます。これが安倍氏に批判的な立場の人々の懸念を強めさせています。
 
東京新聞は、1面2番記事「憲法解釈見直しありき 首相有識者懇が再開」で、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」のメンバー14人全員が「集団的自衛権容認派」であり、「結論ありきで解釈改憲を目指す首相の主張を代弁する内容となりそうだ」と示唆しています。
 
「国家の物語」と「国民の物語」
安倍首相は、自己の考え方や価値観の全容を語りません。結果として、周囲やマスコミがあれこれと解釈をします。私たちは、自分の考え方や価値観に照らし合わせ、それを「良い」ととらえ、また「悪い」ととらえます。しかしこの流れはあまり健全とは言えません。
 
安倍氏は一国の首相として、日本国の全体像について考えるところを具体的に国民に語るべきです。ただ、安倍氏はそういうことがあまり得意ではないように見えます。そこでマスコミが代わりに大きな仕事をする必要があります。安倍首相を支持する新聞と批判的な新聞が同時に、安倍首相が意図する「国家の物語」の全体シナリオを明らかにするのです。
 
つぎに私たちは、2つの「国家の物語」を読み解き、自分たちの「国民の物語」をどう創るかを考える必要があります。民主主義の根幹は国民主権です。主権者は自分の権利に対して義務を負います。それは、自分が「国家の物語」の主役だという自覚です。考え方や価値観の「違い」を建設的な対話を通してまとめあげるのが、成熟した民主主義です。その推進母体は、政治家ではなく、私たち有権者です。「国民の物語」を創り始める時です。

(文責:梅本龍夫)



  1. 【政府広報】 「休眠農地、貸し出し促進 来年度から 集約化へ新組織 TPPへ競争力強化」
    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130917-OYT1T01584.htm?from=ylist
  2. 【独自取材】 「徳洲会本部など捜索 徳田議員選挙支援 運動員買収疑い 東京地検」
    http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20130918-OYS1T00242.htm
  3. 【連続企画】 「老いも若きも広がる裾野 ~決定東京五輪8.」

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「『知る権利』明記を検討 秘密保護法案 『報道の自由』も」
    http://www.asahi.com/politics/update/0918/TKY201309180001.html
  2. 【独自取材】 「遮水壁、2年前見送り 福島第1 東電、破綻を懸念」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309170765.html
  3. 【独自取材】 「最初で最後?キトラ上京 壁画復元後は持ち出し困難」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/OSK201309170190.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【政府広報】 「集団的自衛権 憲法解釈変更、来春以降 政府、公明に配慮」
    http://mainichi.jp/select/news/20130918ddm001010058000c.html
  2. 【政府広報】 「知る権利明記へ 秘密保護法案、公明懸念で 政府」
    http://mainichi.jp/select/news/20130918ddm001010071000c.html
  3. 【連続企画】 「現場に漂う『なぜ今』 ~どう動く 集団的自衛権1.」
    http://mainichi.jp/select/news/20130918ddm001010058000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【独自取材】 「NISA、200万口座超す 貯蓄から投資弾み 専用投信など170本」
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGD1704R_X10C13A9MM8000/
  2. 【連続企画】 「40億人市場、争奪戦に スマホアプリ隆盛 ~モバイル奔流」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD130VA_T10C13A9MM8000/
  3. 【企業広報】 「IHIが発電所運営 風力など、まず米で8ヵ所」
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD130V7_X10C13A9MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【行政広報】 「都が大地震危険度調査 区部東部に『5』集中 5段階評価 倒壊リスクは減」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013091802000135.html
  2. 【独自取材】 「憲法解釈見直しありき 首相有識者懇が再開 集団的自衛権、全員が容認派」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013091802000136.html
  3. 【独自取材】 「生活保護減額 審査請求、7600世帯超に 却下なら集団訴訟に移行」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013091702000221.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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