【リグミの解説】 朝日、毎日、日経、東京の各紙は、「調査報道」です。毎日新聞は、「ストーリー」のタイトルで毎日曜日の1面トップ記事に調査報道をもってきていますが、こうした取り組みが各紙にも広がっているようです。
本日の調査報道で一番充実しているの毎日新聞です。天皇陛下の心臓手術の執刀医の天野氏の内面に踏み込んだ物語です。その次が朝日新聞で、世界に通用するコミュニケーション能力を身につけさせようとする教育現場の取り組みを伝えています。東京新聞も、「ラヂオ塔」という歴史に埋もれた記憶を、東京スカイツリーと絡めて掘り起こした興味深い記事です。日経新聞は、調査報道の形式を取っていますが、内容は通常の記事(事実の速報主体の記事)にインタビューを組み合わせ程度のものです。
題材を定め、時間をかけて独自取材を進め、速報では伝わらないストーリー性のある記事を打出す調査報道は、これからの新聞の切り札になると言われています。今後の各紙の取り組みに期待します。
讀賣新聞
【記事】 尖閣、都と本格折衝
- 野田首相は7日、尖閣諸島の国有化方針について、東京都との調整を急ぐ考えを表明した。政府は、領土保全に関する国の責任を明確にするため、尖閣諸島の地権者と購入契約を結ぶ考えだ。
- これに対して、独自に尖閣諸島の購入計画を進めている東京都の石原都知事は、まず都が買い取り、国に引き渡す考えを記者団に示した。
- 一方、尖閣諸島の領有権を主張している中国や台湾は、日本政府の購入方針に強く反発している。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 世界に伝える力 ~教育あしたへ
- 6月17日、日本科学未来館のホールで横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校の生徒たちが個人研究のプレゼンテーションをした。同校は、自分の考えをわかりやすく伝え、相手に働きかける「プレゼンテーション」の教育に取り組む。
- 聞き手は、京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長。「高校生としてよくできている」「具体例を挙げるといい」。ノーベル賞候補と言われる研究者のコメントに生徒たちがうなずく。
- 「プレゼンテーション」を教育に取り込んでいるのは、国際化を踏まえた一部の高校だけではない。日常生活でのコミュニケーションの一部として、自己表現するプレゼン力を育てる取り組みが小中学校でも広がっている。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 「冥府魔道」を歩む ~ストーリー
- 心臓外科のスペシャリスト、順天堂大教授の天野篤さんは、「この道を行けば、どうなるものか。(略)迷わず行けよ、行けばわかるさ」と、自らを鼓舞するように口ずさんだ。プロレスラーのアントニオ猪木さんの引退セレモニーでのファン向けメッセージの一節だ。
- 天野さんは、2月10日に金沢皇室医務主管(当時)に呼ばれた。天皇陛下の心臓を写したフィルムを前に意見を求められた。翌日の検査を経て天野さんは決断した。「症状が進行している。手術すべきだ」
- 天皇陛下の手術が成功し、周りから「お元気になられてよかった」と祝福された。しかし天野さんは意外なことを語った。「僕の中では治療半ばで亡くなっていった患者たちの顔が浮かんでくる。『冥府魔道』なんです」。天野さんが全身全霊を傾けて戦い続けている相手は、栄誉、学閥といったものではない。心臓病という「病魔」だ。亡くなった人たちの無念を感じ、患者を救いたいという思いだけが背中を押し続ける。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 堅調景気、欧州の影
- 日本経済は、復興需要など内需が牽引し、ゆるやかに回復している。
- しかし、欧州債務危機の影響で円高圧力は残り、中国経済の減速や夏場の電力不足という懸念材料もある。
- 堅調な日本経済は、耐久力を試される局面に入った。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 電波の先駆、ラヂオ塔
- 新たな観光地として賑わう東京スカイツリーのすぐそばに80年前、「ラヂオ塔」なるものが建てられた。街頭テレビよりもずっと前の、いわば”街頭ラジオ”だった。
- 日本のラジオ放送は1925年に始まった。その2年前に起きた関東大震災の際にデマが広がり、正確な情報を迅速に伝える新メディアとしてのラジオは待望された。しかし、当時のラジオは高価だったため、日本放送協会は自治体などの協力を得て、各地にラジオ塔を建てていった。
- ラジオ塔は、ピーク時には460ヵ所になったが、1942年で記録が途切れる。兵器増産のために1941年に出された金属類回収令で塔のラジオが撤去されたためと推測される。関西では、「地域コミュニティの再生につながる」として、市民による保存運動も起きている。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)