【リグミのコメント】 本日の1面トップ記事は、東京電力福島第1原子力発電所事故に対する国会事故調査委員会の報告書の発表内容です。
「人災」の指摘を評価
地震・津波への対策を取る機会は何度もあったのに、意図的に先送りしてきた「人災」であると断じたことは、多くの人々の疑問に明確な答えを示したものとして高く評価できます。
原発に対する新たな規制強化の動きがあるたびに、東電は電気事業連合会を通して反対の圧力をかけてきました。規制強化されると原発の稼働率が下がり利益が圧迫されることと、これまで展開してきた安全性の主張を続けられなくなり、訴訟で不利になるおそれがあるため、と報告書は分析しています。原子力保安院が情報や専門性で東電に劣ることもあり、東電の「虜」になっていった、という問題指摘も重要です。
電力会社の「構え」
原子力エネルギーを考える上で、2つの重要な前提があると思います。1つは、「一旦原発事故が起きれば、その被害は甚大であり、最悪コントロール不可になる」ことです。もう1つは、「人間はかならずミスを犯す」ということです。このことを前提とすれば、対策の基本理念は明確になると思います。
最も必要なのは、常に最悪を想定し、リスク要因に対する不断の探究をつづけ、安全対策の見直しと更新を継続する経営者(原発の運用責任者)の「構え」です。法規制の強化や、独立した規制機関による管理・監督の徹底などは、当然必要です。しかし、「当事者」である電力会社が、原発のリスクの特殊性と人間がミスをするものということを自覚し、痛切な思いで事業運営を預らない限り、重大事故はまた起きます。
国会事故調の報告内容は、政府と東京電力に関するものですが、すべての電力会社に共通する問題指摘であると考えるべきです。再稼働した関西電力大飯原発を含めて、50基の原発すべての安全対策と、運営「当事者」である電力会社の経営実態・運営状況を問う必要があります。
日本が世界に発信できること
7月23日には、政府による事故調査委員会(畑村洋太郎委員長、東大名誉教授、失敗学の専門家)による最終報告書が発表されます。これで、国会・事故調査委員会、民間事故調、東電の社内調査と合わせて、4つの調査報告書が出そろいます。それは「始まり」に過ぎません。日本は、世界に対して説明責任を果たし、原子力エネルギー政策に対する根本的な提言をする義務があります。今回の重大事故から本気で学び、根本的な対策を打ち立てることができれば、それは世界共有のアセットとなるのです。
讀賣新聞
【記事】 東電・国による人災
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 「原発事故は人災」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 「原発事故、明らかに人災」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 欧州利下げ、最低の0.75%に
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 地震で損傷の可能性
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)