2013.08.19 mon

新聞1面トップ 2013年8月19日【解説】開国のメンタリティー

新聞1面トップ 2013年8月19日【解説】開国のメンタリティー


【リグミの解説】

外国人旅行客の増加
今年1~6月に来日した外国人旅行客は495万人で、半年ベースの最多を更新し、年間1000万人も視野に入ってきた、と読売新聞は報じています。ただ、2桁成長を4年続けている韓国は2012年に1114万人の外国人訪問者数でした(同年の日本は836万人)。
 
国土の大きさや人口で日本と近い国言うと、フランス8302万人、スペイン5770万人、イタリア4636万人、トルコ3570万人、ドイツ3041万人、英国2928万人、といった数字が並びます。
 
ポテンシャルは3000万人
正確な分析が本来必要ですが、日本への観光客を3倍増の3000万人レベルにするポテンシャルは十分にあるのではないでしょうか。実際、政府は2030年には宿泊客の6人に1人(約17%)は外国人にする目標を掲げています。現在が約6%ですから、ざっと3倍増を目指していることになります。これは、2桁超の成長を続ける巨大市場を意味します。
 
読売の関連記事で、星野佳路・星野リゾート社長は、「外国人観光客の約6割は東京に、約2割は京都に集中している。地方が地方ならではの魅力を発信することも求められている。日本の強みは、北は北海道から南は沖縄まで、気候や食べ物、文化などの多様性にある」と指摘しています。外国人旅行客が地方にもっと足を運ぶようになれば、観光業の裾野はぐっと広まります。
 
観光の閉鎖性
同記事を読むと、日本の観光業はガラパゴス化している側面があり、「言葉や習慣が違う外国人客は面倒」という旅館やホテルが少なくないようです。星野氏は、「日本にはアジアでは他に例を見ない巨大で安定した国内旅行市場がある」と言います。ここに安住することも可能でしょうが、これでは「半鎖国」です。世界経済フォーラムの「観光競争力ランキング」(3月発表)で、日本の「観光の開放性」は140ヵ国中137位で、閉鎖性が際立っています。
 
「おもてなし」の文化
ところが同じ調査で、「訪問客への姿勢」は1位です。ニセコの魅力を外国に知らしめたオーストラリア人のロス・フィンドレー氏(ニセコアドベンチャーセンター代表)は、「日本には丁寧で親切な人が多く、『おもてなし』の文化がある」と言います。星野氏も、「日本の旅館に対して客が求めるサービス水準は、西洋のホテルよりはるかに高く、それが日本の『おもてなし』の素晴らしさにつながっている」と示唆します。
 
「ソフトパワー」の競争を
8月は、「戦争と平和」について見つめ直す季節ですが、最近は近隣諸国との緊張関係や憲法改正問題、自衛隊の位置づけ(国防軍や集団的自衛権)の問題も浮上し、「ハードパワー」(軍事力を基軸とした経済力、外交力)を強化すべし、という論調が強まってきています。
 
しかし、緊張関係を前提にするのでなく、緊張緩和と共存共栄を目指すのが本来の国交であり外交です。とすれば、「ソフトパワー」(国家の文化や歴史、社会の在り方の魅力)を強化することこそ、長い目で見ればより強固な安全保障の礎となるものです。
 
メンタリティーを変える
そのためには、「半鎖国」のメンタリティーを変えることから始めるべきです。人口減少と高齢化が急速に進む日本で、移民政策をどうするかは大きな政治課題ですが、ほとんど議論にもなりません。移民が社会に与える影響の大きさを考えると、日本人が慎重になる理由も理解できます。私たちがまず取り組むべきは、観光における「開国」です。
 
外国人を「お客様としてもてなす」ことに慣れ、それを大きなビジネスにしていくことで、日本の「ソフトパワー」を磨き上げる。それは、紛争や軍事衝突に怯え、「ハードパワー」の無益な拡大競争に巻き込まれるよりも、よほど前向きで生産的なことです。何よりも、「お客様の喜ぶ姿」は最高の報酬です。楽しくわくわくする仕事が待っています。

(文責:梅本龍夫)



  1. 離婚時に養育費合意56% 改正法1年浸透不足 「親子の面会」は55%
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130818-OYT1T01074.htm
  2. 観光地「海外客は面倒」 Nippon蘇れ 吸収2
  3. 桜島 噴煙5000メートル 昭和火口で最高観測
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130818-OYT1T00520.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 関税撤廃品目 最大85% TPP交渉、政府提示へ
    http://www.asahi.com/business/update/0819/TKY201308180218.html
  2. 捨てられる老母 インド 高齢者1億人 アジア成長の限界 人口増加国のわな 上
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308180340.html
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    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308180358.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 稼働26年 廃炉90年 「解体先進国」英の原発 高線量 作業に壁
    http://mainichi.jp/select/news/20130819ddm001030099000c.html
  2. 桜島 噴煙5000メートル 昭和火口で最高
    http://mainichi.jp/select/news/20130819k0000m040044000c.html
  3. 水害被害額170倍に 2050年 世界沿岸都市 世観など試算
    http://mainichi.jp/select/news/m20130819k0000m040141000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 航空機 燃費3割改善 川重、新エンジン開発 英ロールスと 小型機で日米路線可能
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD1802Q_Y3A810C1MM8000/
  2. 深掘り・分散 解探る 「中国減速」に揺るがない 収益回復 次の一手 下
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO58650830Z10C13A8MM8000/
  3. 海外公的年金、日本株に 仏基金、500億円を集中投資
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC1800U_Y3A810C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 家の中の線量 外と変わらず「6割下がる」甘い帰還の前提 福島の3市町村
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013081902000105.html
  2. 新日鉄住金 賠償の意向 韓国・徴用工訴訟 敗訴確定時 戦後補償に影響
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013081902000106.html
  3. 被災地に元気 カラフル壁画 コマ劇場跡地

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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