2013.08.08 thu

新聞1面トップ 2013年8月8日【解説】男女の「違い」を活かす

新聞1面トップ 2013年8月8日【解説】男女の「違い」を活かす


【リグミの解説】

「男も動く」
日経新聞の連続企画「Wの未来」で男性が女性の職場に進出する事例を紹介しています。全日空の客室乗務員の男性(27)は、コールセンターで苦情や要望に対応するうちに「電話ではなく搭乗中の顧客と接したい」と思うように。自分なりのサービスを発揮すべく、夫への贈り物選びのアドバイスや男性客とのサラリーマン談義に花を咲かせています。
 
浜松市職員の男性保育士(28)は、男性用の更衣室もトイレもない職場で、女性同士の会話にも加われず、地域からは好奇の目で見られました。女性の中に溶け込もうとエプロンをつけた時もありましたが、経験を積むうちに「父親や兄に代わる役割を求められている」ことに気づき、「本気で怒るのが自分の担当」と自覚するようになりました。
 
「女の園」
30年以上昔の話になりますが、当時の電電公社(現NTT)では手動の電話交換業務がまだ盛んでした。こうした職場は全員女性と決まっていました。そのころ私は、電話局のいろいろな部門を体験する研修を受けていたのですが、女性しかいない電話交換部門に配属された体験は、鮮明に覚えています。
 
器用に電話交換作業をこなす女性たち。その長いラインの後ろを年長の管理者がサービス品質のチェックと個別指導のために巡回していましたが、こちらもすべて女性。こんなところにひとり紛れ込み、居場所がない感覚になりました。先の男性保育士の体験とそっくりです。見よう見まねでオペレーター業務を始めると、ヘッドホンの先の顧客は決まって「あら?男の人が出たわ??」と戸惑いの声を出したものです。
 
男女の「違い」を認める
日経の記事は、製鉄所という男の職場に女性が配属された神戸製鋼所の事例も紹介しています。男性管理者は、危険な職場に女性を送り込む会社に最初は憤りを感じましたが、現場で実力をつけた女性たちは、男性が見過ごした業務改善を提案するまでになりました。男性管理者は、今や「男性部下を指導する力をつけてほしい」と期待をかけるまでになりました。
 
女性が男性の職場に進出するケースも、逆に男性が女性の職場に進出するケースでも、一旦は「同質化」しようという動機が働きます。仲間として受け入れられ、能力があると認めてもらうために、女性は男性のように働き、男性は女性の姿を真似します。しかし男女には自然な「違い」があります。その「違い」を互いに認め、異質なものが出会うことで生じる化学反応をうまく活用する方が、「ウィン・ウィン」の環境を作れます。
 
管理者の価値観がカギ
その際にカギを握るのが、現場を管理する上司や会社幹部の価値観です。私が1980年代前半に電話交換部門を体験した時は、男性の部門責任者が女性オペレーターたちのことを「女の園」と呼び、どこか蔑む発想がありました。男尊女卑が今よりも根強くあった時代ということもありますが、女性のみの職場特有の管理の難しさを盛んに口にし、心理的な壁を作っているように見えました。
 
男性管理者が女性中心の現場を「上から目線」で管理指導する職場は、今でも珍しくないと思います。「女子ども扱い」する男性に対して、女性たちが結託して「女の園」的な職場環境を作って対抗することは、今でもあるかもしれません。こうした傾向は、どちらに根本原因があるかはわかりません。「鶏と卵」の部分もあると思います。とすれば、上に立つものが「変わる」のがあるべき姿でしょう。
 
その上で、日経の記事に出てくる男性たちや女性たちのように、「女の園」や「男組」に勇気をもって進出し、「自分たちらしさ」を発揮することができれば、日本の職場の「多様性」が高まります。多様性の最大の価値は、創造性の発揮にあります。職場が活き活きとした創造性を発揮するようになると、停滞を突き破る「成長戦略」がにわかにリアルなものとなります。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 【独自取材】 「熊本の病院、養子あっせん 初の参入 寄付金受領せず 日本医師会の要請受け」
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130808-OYT1T00195.htm
  2. 【政府広報】 「福島第一 汚染水1日300トン海へ 経産省推計 東電、当面100トンくみ上げ」
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130807-OYT1T01156.htm
  3. 【独自取材】 「『被災地に聖火を』 夢つなぎ1000キロ」
    http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20130807-OYT1T01110.htm?from=ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【政府広報】 「海に汚染水1日300トン 福島第一原発 政府、国費で対策 東電任せ、破綻」
    http://www.asahi.com/national/update/0807/TKY201308070432.html
  2. 【政府広報】 「原発避難区域、再編が完了 福島 協議難航、1年遅れ」
    http://www.asahi.com/politics/update/0707/TKY201307070166.html
  3. 【独自取材】 「ガソリン160円超す 4年10ヵ月ぶり、円安影響」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308070651.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【政府広報】 「汚染水流出1日300トン 政府試算 首相『国が対策』」
    http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130808ddm001040035000c.html
  2. 【政府広報】 「学校耐震化 つり天井、対応9% 公立小中 校舎・体育館89%完了」
    http://mainichi.jp/feature/news/20130808ddm001100042000c.html
  3. 【独自取材】 「米露首脳会談、延期 CIA元職員亡命に反発 米が声明」
    http://mainichi.jp/select/news/20130808ddm001030088000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【調査記事】 「研究開発費、24%が2桁増 トップ3は車 燃料電池に力 今年度本社調査 全体では5.4%増」
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG0700U_X00C13A8MM8000/
  2. 【連続企画】 「未知の発想、社会に刺激 描く夢は同じ ~Wの未来 男も動く②」
  3. 【企業広報】 「キャノンが遺伝子診断装置 15年にも生産開始 米に拠点、100億円投資」
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0702Y_X00C13A8MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「遮水壁、両刃の剣 建屋から逆流の恐れ 汚染水に国費検討 地下水との水位均衡崩れ」
    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013080890070026.html
  2. 【連続企画】 「音+アニメ、客開拓 ご当地作品を積極上映 シネマシティ ~探訪 都の企業 立川編(上)」
  3. 【独自取材】 「子ども記者×下町ボブスレー 仕事フェア」

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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