2013.08.01 thu

新聞1面トップ 2013年8月01日【解説】「建前音痴」を鍛え直す

新聞1面トップ 2013年8月01日【解説】「建前音痴」を鍛え直す


【リグミの解説】

政治家のメッセージ
「音痴」とは、「生理的欠陥によって正しい音の認識と記憶や発生ができないこと。転じて、(ある方面に)感覚が鈍いこと」(広辞苑)。政治家は、国や自治体のマーケターであり、広報担当です。人々は政治家の美しい歌声を期待します。コミュニティーや国家や世界全体をより良いところにしていく言葉、メッセージを求めています。
 
ところが、日本の政治家はしばしば、音程のはずれた耳触りのわるい発言をします。人々に不快な思いや不安感を抱かせる不協和音を奏でます。橋下徹・日本維新の会共同代表が「従軍慰安婦発言」で世界の顰蹙(ひんしゅく)を買った時は、外交経験のない未熟な政治家の勇み足という側面もありました。今回、首相経験者で自民党・政権の重鎮の麻生副総理が「改憲」でナチス政権時代のワイマール憲法を引き合いに出す発言をしました(参照:朝日新聞DIGITAL)。
 
 
政治家はマーケターであり広報担当
橋下氏も、麻生氏も、自分の発言が国際的にネガティブな反響を呼ぶとは予想していなかったように見えます。国内で価値観や考え方を共有する支持者グループに向けたメッセージであったのだと思います。「僕の言いたいことわかるでしょ?」「わかる、わかる!」という関係であれば、多少の逸脱や粗雑さは大目に見てもらえます。
 
しかし国政レベルで大きな影響力を行使する政治家であれば、いかなる場にあっても、国家のマーケター、広報担当としての自覚をもった言葉づかいが必要になります。
 
「建前」と「本音」
問題の背景には何があるのでしょうか。私は、日本人の「建前」と「本音」の使い分け方に一因があるように感じます。私たちは、「建前」と「本音」は相対的な関係であり、時と場で流動的に変化するものととらえがちです。「建前」とは「掛売りや大道商人が物を売る時の口上」であり、転じて「表向きの方針」(広辞苑)です。ウソとは言わないまでも、張子の人形のように「ほんものでない」というニュアンスがあります。
 
これに対して「本音」は、「まことの音色(ねいろ)」であり、「本心から出たことば」(広辞苑)。ところが「まことの音色」(本音)が音痴であるために、「建前」の建てつけがわるくなる。これが日本の政治家の舌禍の一因です。
 
「原理原則」を身に着ける
「従軍慰安婦」問題の背景には、女性の人権を軽視してきた歴史があります。「ナチス」問題の根幹には、人種や民族に対するいわれなき偏見と差別がありました。人類は、洋の東西、地域・国家・民族を問わず、無数の過ちを犯してきました。国際レベルで共有された「建前」は、人類の歴史から学ぶという姿勢です。間違いを繰り返さない決意をし、断固とした態度で臨むということです。「建前」の英語直訳はありません。あるとすれば「Principle」です。原理原則を掲げ、それを公のルールにしていく姿勢です。
 
日本は「本音」の方が「ほんもの、素顔」で、「建前」は「仮の姿、化粧顔」というニュアンスがあります。しかし「本音」は隠すものなので、「建前」が必要という態度です。一方、「Principle」(原理原則)としての「建前」は、軸足であり、絶対のものです。ゆらゆらしません。そのことを自覚できていれば、「建前」に抵触する発言をするときは、どのような言葉を選び、どのようなロジックを組み立て、どこで理解と共感を得るかを周到に考えます。
 
国家のマーケター・広報担当である政治家は、まず「建前音痴」を自覚し、「Principle」を学ぶことからスタートすべきだと思います。「Principle」を身体感覚としてしっかり持っていれば、不要な舌禍事件を招くことはありません。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 【司法広報】 「裁判員辞退『精神負担』容認 最高裁通知 選任時に説明へ 審理で『遺体写真』」
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130731-OYT1T01579.htm?from=ylist
  2. 【独自取材】 「TPP部分合意『10月公表』 米打診、日本は『一括で』」
    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130731-OYT1T01643.htm?from=ylist
  3. 【政府広報】 「『孫に贈与』再生エネも 政府・与党検討 太陽光パネル非課税」

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「汚染水漏れ口、2年放置 東電福島第一 事故直後、対策発表」
    http://www.asahi.com/national/update/0801/TKY201307310597.html
  2. 【行政広報】 「警報・注意報⇒『レベル』に 気象庁、災害危険度5段階で」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201307310743.html
  3. 【政府広報】 「住宅着工好調、8.6%増 今年上半期 リーマン前水準回復」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201307310747.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【独自取材】 「被災者支援、先送り密議 復興庁3月『参院選後に』 暴言ツイート裏付け」
    http://mainichi.jp/select/news/20130801k0000m010178000c.html
  2. 【政府広報】 「来年度予算 概算要求2段階査定 10%削減、消費増税別枠」
    http://mainichi.jp/select/news/20130801ddm001010052000c.html
  3. 【独自取材】 「アンドロメダ、くっきり すばる高性能カメラ撮影」
    http://mainichi.jp/select/news/20130801ddm001040045000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【企業広報】 「スマホ電池、容量10倍 信越化学が新材料 3~4年後量産 長時間利用 開発競争が加速」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD3106M_R30C13A7MM8000/
  2. 【連続企画】 「改革に既得権益層の壁 『リコノミクス』の挑戦 ~変調中国(上)」
  3. 【政府広報】 「電力3社、9月値上げ 北海道・四国、8%前半 東北、9%軸 政府認可へ」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS3103W_R30C13A7MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「デマ、外国人憎悪、今も 関東大震災、朝鮮人虐殺 悲劇90年『繰り返すな』」
  2. 【独自取材】 「虚偽捜査報告 田代元検事、再び不起訴 最高検 嫌疑不十分で終結」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013080102000128.html
  3. 【連続企画】 「8ヵ月ぶり、景況感悪化 資材高騰、価格転嫁できず ~探訪 都の企業 景気診断編」

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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