【リグミの解説】
自民党、シナリオ通りの勝利
参院選で自民党が圧勝しました。自民党内では当選者予想は最大70人だったという話も聞きましたので、65人当選は「順当」な結果だったのだと思います。憲法、原発、TPPなどを争点化させず、「経済再生」(アベノミクス評価)に有権者の意識を集約できたことが奏功しました。
自民党は、政権時代の民主党のガバナンス(党内の統治能力)の欠落から多くを学びました。その結果、党内の異論反論を封じ、衆参両院で過半数を取り「ねじれ」を解消することに全精力を集中しました。これで、今後3年間は大きな国政選挙が予定されていないため、安定した基盤のもと、「決定する政治」が進むと予想されます。問題は、「何を決定するか」です。
社説の比較(「サードビュー」)
この点について、新聞各紙はどう見ているでしょうか。社説のタイトルを併記します。
読売: 「参院選自公圧勝 数に傲らず着実に政策実現を 日本経済再生への期待に応えよ 国民は安定を望んだ 野党再編への機運も 政策に優先順位が必要」
朝日: 「両院制した自公政権 民意とのねじれ恐れよ アベノミクスを評価 期待は『両刃の剣』 野党の再生はあるか」
毎日: 「衆参ねじれ解消 熱なき圧勝におごるな 政治の安定求めた民意 存在意義問われる民主」
日経: 「経済復活に政治力を集中すべきだ 『古い自民』に歯止めを カギ握る成長戦略実行」
東京: 「参院選、自民が圧勝 傲らず、暮らし最優先に 絶対的支持でなく 暴走、公明が止めよ 『環視』続ける必要」
各紙の主張は、自民党の圧勝を正面から見るか、斜め後方から見るかの違いはありますが、内容は概ね同じです。大雑把にくくると、①「自民党は圧勝に傲るな」②「野党、しっかりせよ」③「今後も経済再生に集中せよ」―となります。
それぞれについて、主な「懸念」が少なくとも2つずつぐらいは示されています。①は、自民党の古い体質(財政を悪化させるバラマキ)に逆戻りする懸念と、外交などでの右傾化への懸念―。②は、民主党のガバナンス(統治能力)への懸念と、自民党の対抗勢力の欠落懸念―。③は、成長戦略の実現を加速しないと「期待」が「失望」に変わる懸念と、財政再建への懸念―。
マスメディア、評論家、野党
マスメディア、評論家、そして野党には、共通項があります。政権当事者でない立場から政権を批判し論評するということです。「リグミの解説」も、メディアの片隅での活動という意味では大同小異です。
時の権力に対して、こうした第三者が「チェック機能」を果たすことには大きな意味があります。偉大なアスリートには優れたコーチがおり、大きな業績を達成する経営者にはメンター(賢明で信頼できる助言者)がいます。マスメディア、評論家、野党は、コーチやメンターの役割を果たすことは可能でしょうか。
ポイントは3つあります。アスリートとコーチや経営者とメンターの関係には、第1に「信頼関係」があります。第2に、アスリートや経営者が成功することがコーチやメンターの成功を意味します。つまり「目的・目標が共通」です。第3に、そうした目的や目標を達成するために、「対話」を心掛け、「仮説と検証」を繰り返します。
歴史から学ぶことが「賢明な国」への第一歩
「日本国の成功」という共通の目的に向けて、どれだけ信頼関係を築き、対話を積み重ねることができるか。与党と野党のように、「ウィン・ルーズ」の競争関係にある政党が、つぶし合いをしているうちは、「日本国の成功」は見えてこないでしょう。
2009年の「民主党圧勝/自民党惨敗」と2012~2013年の「自民党圧勝/民主党惨敗」の歴史から、両党が本質的な何かを学んだ時、そしてマスコミや評論家がその学びを促進する役割を果たせたとき、日本は今よりも「賢明な国」となり、「日本国の成功」が現実味を帯びてきます。
(文責:梅本龍夫)
- 【独自取材】 「自公過半数、ねじれ解消 自民1人区圧勝 民主惨敗 東京も失う」
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2013/news/20130721-OYT1T00612.htm - 【政府広報】 「アベノミクスを加速 首相 競争力強化法、成立急ぐ」
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2013/news/20130721-OYT1T00682.htm - 【論説記事】 「懸案に挑む『黄金の3年』 政治部長・永原伸」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
- 【独自取材】 「自民圧勝、衆参過半数 自民1強体制に 安倍首相 経済優先を継続 改憲勢力の結集図る」
http://www.asahi.com/politics/update/0722/TKY201307210365.html - 【政府広報】 「消費増税、慎重に見極め 首相」
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201307220046.html - 【解説記事】 「民主大敗、過去最低 共産、選挙区で3議席」
http://www.asahi.com/politics/update/0623/TKY201306230234.html
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
- 【独自取材】 「自民圧勝、ねじれ解消 民主惨敗、改選17 アベノミクスに支持 共産3選挙区で議席 改憲勢力、3分の2近づく」
http://senkyo.mainichi.jp/news/20130722ddm001010199000c.html - 【論説記事】 「白紙委任ではない 政治部長・前田浩智」
http://senkyo.mainichi.jp/news/20130722ddm001010203000c.html - 【独自取材】 「首相、96条改正意欲 『まずは国民投票法』」
http://mainichi.jp/select/news/20130722k0000m010182000c.html
(毎日jp http://mainichi.jp/)
- 【独自取材】 「与党圧勝、ねじれ解消 参院選、自民65大幅増 民主17、過去最低に 維・み・伸び悩み アベノミクスに信任」
http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS21036_R20C13A7MM8000/ - 【企業広報】 「NEC、HPと提携 高性能サーバー、開発・生産」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD1905D_R20C13A7MM8000/ - 【論説記事】 「『3年間』を生かせるか」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
- 【独自取材】 「安倍自民が圧勝 参院選 衆参で与党過半数 投票率低迷52%前後 民主、過去最低」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/senkyo/sanin2013/all/CK2013072102100074.html - 【解説記事】 「改憲、歯止め 原発・TPP、推進 ~岐路」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2013072202000156.html - 【論説記事】 「対話の政治を望む 名古屋本社論説主幹・深田実」
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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