2013.07.18 thu

新聞1面トップ 2013年7月18日【解説】無意識の「渇望」を見る

新聞1面トップ 2013年7月18日【解説】無意識の「渇望」を見る


【リグミの解説】

参院選直前の大規模世論調査(つづき)
読売新聞/日経新聞、共同通信に続いて、朝日新聞も衆院選直前の大規模世論調査を実施しました。有効回答4万6406人(回答率58%)。これで3つの大規模調査の合計で実に9万5千人近くの有権者が回答したことになります。3つの調査結果を併記します(読売/日経は読売のグラフを読み取り、共同通信は毎日掲載の数値を利用)。
 
                      読売/日経        共同通信         朝日
自民党           60~65           62~68           64~72
民主党          10~22            16~25           13~23
公明党            7~11            10~12             8~12
日本維新の会  7~14              5~9               4~9
みんなの党      5~13              4~11             4~9
共産党            3~12              3~9               4~10
 
数値に若干の違いはありますが、異なったシナリオを予測するほどの差異はありません。大手新聞社や通信社が同じ趣旨の調査を二重、三重に行う価値がどこにあるのか素朴な疑問もあります。唯一、3~4万人規模の世論調査になると、ほぼ同じ結果が出てくることがわかり、医者の「セカンドオピニオン」で似た診断が出て納得するといった効果はあります。
 
世代別の自民党支持率
これだけの規模の調査になると、セグメント情報を分析し開示する価値があります。朝日は「選挙区で自民に投票すると答えた人」を年代別に開示しています。さらに2001年の調査と時系列比較も出しているのは参考になります。
 
                 2001年     2013年
20代          40%        54%
30代          40%        55%
40代          41%        52%
50代          45%        49%
60代          51%        49%
70歳以上   58%         52%
 
自民党は伝統的に高齢者ほど支持率が高くなる傾向がありましたが、今回は若年層の支持率が大幅に上がり、むしろ高齢者よりも高い数値になっています。朝日は、安倍首相の経済政策に「期待できる」と答えた割合が、年代が若くなるほど高くなる傾向があることを明らかにし、「若・壮年層」がアベノミクスに期待を寄せた結果ではないかと示唆しています。
 
若い世代の「閉塞感」
それはひとつの有力な理由と推測できます。ただ、若い層の支持率の背景は、もっと分析する必要があると思います。高度成長やバブルを経験せずに社会人になった今の40代前半よりも若い世代は、「失われた20年」しか体験していません。経済成長を体験した世代と、したことがない世代の間に、大きな溝があることに年長者はあまり気付いていません。
 
3.11前までマスコミでよく使われた言葉が「閉塞感」でした。「この国には何でもあります。しかし、希望だけがない」という村上龍の『希望の国のエクソダス』の主人公のフレーズが時代の気分を代弁したのは2000年のこと、「失われた10年」と言われ始めた頃でした。3.11を経ても、日本は「変われない」とあきらめかけていた人々に対して、「日本を取り戻す」という強いフレーズで登場した第2次安倍内閣は、強いアピール力を持ったと思います。
 
無意識的な「渇望」に冷静に向き合う
参院選は、自民党の経済政策が最大の争点と言われます。まずは景気回復を実現してほしいというのは、確かに国民の最大公約数の声だとは思います。しかし、その背後には、戦後の復興と経済成長という国力増強を体験したことがない世代の「渇望」があるように感じます。それは、半ば無意識的なものかもしれません。それだけに注意深く分析し、「社会の気分」の深層を明らかにする必要があります。
 
その意味で、参院選の本当の争点は、「戦後の総括」であると言えます。「戦前」はおろか、「戦後」も知らない世代に、どうやって日本国の今の成り立ちを共有するか。参院選をひとつのきっかけとして、中高年世代は日本の現代史(昭和と平成の歴史)をできるだけ全体観をもって説明し、若い世代と「対話」を始めるきっかけにすべきではないでしょうか。
 
そのためには、50代以上が、自分たちが体験してきたり、親世代から語り聞かされた日本の現代史を、今一度学び直す必要があるのは言うまでもありません。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 【独自取材】 「新型出生前診断、陽性29人 1534人検査 確定後、2人中絶」
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130717-OYT1T01462.htm?from=ylist
  2. 【政府広報】 「海保長官、初の現場出身 佐藤保安監 尖閣警備など重視」
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130717-OYT1T01494.htm?from=navr
  3. 【独自取材】 「広島遺棄、6容疑者逮捕 16歳男女5人と21歳男」
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130718-OYT1T00092.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【世論調査】 「与党、過半数は確実 自民、改選議席倍増の勢い 民主、20議席割れも」
    http://www.asahi.com/politics/update/0718/TKY201307170778.html
  2. 【スクープ】 「原発立地の前楢葉町長親族企業 西松建設が無担保融資 東電、働きかけか 2.3億円、焦げ付き」
    http://www.asahi.com/national/update/0718/TKY201307170769.html
  3. 【独自取材】 「少女の仲間ら6人逮捕 広島・遺棄容疑 『みんなで殺した』」
    http://www.asahi.com/national/update/0717/OSK201307170196.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【調査記事】 「候補者、演説告知、つぶやきの大半 利用者、『日本』突出、行く末憂い? すれ違い 政策対話薄く 本紙・立命館大 共同研究 ~2013参院選 ネット選挙」
    http://senkyo.mainichi.jp/news/20130718k0000e010133000c.html
  2. 【独自取材】 「少女友人6人を逮捕 広島・遺棄容疑 金銭トラブル」
    http://mainichi.jp/select/news/m20130718k0000m040125000c.html
  3. 【独自取材】 「石巻市、見せた不屈 初勝利」
    http://mainichi.jp/sports/news/20130718ddm001050081000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【企業広報】 「半導体、増産投資を再開 東芝・エルピーダ 2年ぶり スマホ好調で需給改善」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD170PB_X10C13A7MM8000/
  2. 【連続企画】 「賃金上昇、時間との戦い マネーの賞味期限は ~物価考4.」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASM20300N_Y3A700C1MM8000/
  3. 【独自取材】 「『緩和縮小は景気次第』 FRB議長 低い物価上昇率、懸念」
    http://www.nikkei.com/article/DGXNZO57468090Y3A710C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「参院選、一緒に行ける 成年後見、3訴訟和解 当たり前の権利 気付いた重み」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013071802000139.html
  2. 【連続企画】 「反対住民、国が訴え 意思表示すら許されず ~7.21参院選 岐路 憲法を歩く(中)」
  3. 【行政広報】 「東京駅も自転車放置禁止 丸の内側、本年度から」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013071802000138.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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