2013.06.28 fri

新聞1面トップ 2013年6月28日【解説】体罰のない社会

新聞1面トップ 2013年6月28日【解説】体罰のない社会


【リグミの解説】

「体罰」の実態
文科省が進めている体罰の実態調査の集計内容を読売新聞が記事にしています。「体罰、3200校で6000件、被害1.2万人に」とあります。3200校は、調査対象の全国の公立小中高など約3万8000校の8.4%です。これは実態をどれぐらい反映しているのでしょうか。
 
森川貞夫・日本体育大学名誉教授(スポーツ社会学)は、「これまでの学校や教委の体罰の把握が、いかに表面的だったかがわかる。質問の仕方によっては件数がさらに変わる可能性もある」と指摘しています。
 
調査手法の課題
「いじめ調査」の時も思いましたが、この種の実態調査がどのように行われているのか気になります。企業の中で「アンケート調査」をした経験から言うと、「記名式」か「無記名」かで、回答内容は大きく変化します。さらに「無記名」でも、筆跡や回答の具体的内容で、個人が特定されることを気にする回答者もいます。
 
今回の「体罰調査」では、回答者が教師か生徒(あるいは保護者)かでも、内容はかなり違うはずです。被害の実態を公に知ってもらいたいケースと、自分に不利なことはコメントしたくないケースのせめぎ合いになる可能性があるからです。
 
「体罰は体刑」
「体罰」の意味を辞書で調べると、「身体に直接苦痛を与える罰」(広辞苑)とあります。英語では「Corporal Punishment」で「肉体への罰」という同じ表現なのですが、この英語は「ムチ打ちの体刑」という意味でもあるようです(ジーニアス和英辞典)。「体罰」は、教育現場における「愛のムチ」という受け止め方がありますが、「体刑」としての「ムチ打ち」と同じ表現であることで、わかることがあります。それは、「体罰」という行為が、理由はどうあれ、本質的に「野蛮」だということです。
 
森川教授は、体罰調査で実態数が増えた背景として、「体罰が社会問題化し、どんな場合も暴力は許されないという意識に変化してきたことの表れだろう」と語っています。読売の記事のタイトルが「体罰の被害」という表記になっているのも、考えてみれば奇異です。「体罰=愛のムチ」であれば「被害」ではなく「教育」です。「体罰=暴力」とすることで、はじめて「被害」となります。
 
教育の責任を共有
私たちが外野から「体罰批判」をすることは簡単ですが、実際の教育現場には、やむにやまれぬ事情や、「こんなことが体罰ととらえられるのか?」と戸惑うケースもあるでしょう。「体罰=愛のムチ」は我慢したが、「暴言=愛のコトバ」になってしまっている面もあるかもしれません。問題は生徒の身体と心に負わせる傷です。結果として生徒を傷つければ、教師の側も心に傷を負います。
 
「体罰」が社会問題化したことをきっかけに、ともすれば閉鎖空間になりがちな学校の中に、「対話」が生まれることを希望します。まず教師同士が胸襟を開いて話し合う。教師と生徒が話し合う。保護者だけでなく、コミュニティーのさまざまな人々とも話し合う。
 
そんな「対話」のタスキがどんどんつながっていけば、教師も生徒も追い込まれずに済むのではないでしょうか。本来教育は、学校任せの活動ではないはずです。「体罰」など一切なくても、子どもたちをりっぱに育てられることを、私たち大人が責任をもって実証することが大切だと思います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 【独自取材】 「体罰、3200校で6000件 全国の小中高 被害1.2万人に昨年度、本社集計 文科省、近く最終方向」
       http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130627-OYT1T01625.htm?from=ylist
  2. 【独自取材】 「中韓、半島非核化へ努力 両首脳 日本と首脳会談探る」
       http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130627-OYT1T01216.htm
  3. 【連続企画】 「決める政治に変わるか 野中尚人・学習院大教授 ~参院選に望む2.」
       

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「復興予算で電力会社支援 原発停止の負担、穴埋め 100億円流用 一部返還へ」
       http://www.asahi.com/special/news/articles/TKY201306270497.html
  2. 【論説記事】 「見過ごせぬ、議論なき原発回帰 論説主幹・大野博人 ~座標軸」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306270743.html?ref=twitter
  3. 【独自取材】 「『歴史問題で対立・不信』 中韓首脳、日本を批判」
       http://www.asahi.com/international/update/0627/TKY201306270373.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【政府広報】 「脱法ハウス、捕捉強化 15年国勢調査 前回漏れ受け 総務省」
       http://mainichi.jp/select/news/m20130628k0000m040111000c.html
  2. 【独自取材】 「中韓、北朝鮮核、容認せず 首脳会談 日中韓 年内開催へ努力」
       http://mainichi.jp/select/news/m20130628k0000m030074000c.html
  3. 【独自取材】 「住民反対で頓挫 インドネシア火発計画 日本のインフラ輸出 成長戦略に冷や水」
       http://mainichi.jp/select/news/m20130628k0000m030115000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【独自取材】 「金、マネー流出続く 銅・白金も大幅安 新興国偏重やドルへの回帰」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDC2700E_X20C13A6MM8000/
  2. 【連続企画】 「トップが花咲かせる 出身は『細谷塾』 ~Wの未来 会社が変わる④」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASGG2401R_U3A620C1MM8000/
  3. 【政府広報】 「給油所、安値調達容認 仕入制限 元売りに是正要求へ 公取委」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDF2700Z_X20C13A6MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「復興予算、無理やり消化 中小向けのはずが大手6割 被災地支援、書籍のデジタル化 東北以外に流用25% 支出適切か、徹底検証を」
       http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013062890070805.html
  2. 【連続企画】 「憲法の命運握る 半数改選の猶予、崩れる可能性 ~参議院考 2103年夏選挙を前に(下)」
       
  3. 【行政広報】 「メトロ寮、帰宅支援拠点に 建て替え予定地 認可保育所も併設」
       

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ