2013.06.24 mon

新聞1面トップ 2013年6月24日【解説】「違い」を創る政治

新聞1面トップ 2013年6月24日【解説】「違い」を創る政治


【リグミの解説】

都議選で自公が圧勝
都議選は、国政与党の自民党と公明党が、経済政策を評価する高支持率の追い風を受け、全候補者を当選させる圧勝となりました。第1党だった民主党は議席数が3分の1に激減、第4党に転落しました。二大政党制の体制が崩れる中、自民の反対票の受け皿になったのが共産党で、民主党を上回る17議席で第3党になりました。みんなの党も大きく議席数を増やしましたが、日本維新の会は失速。第3極が結集して反自公の流れを作ることができませんでした。
 
というのが、大方のマスコミの解説のトーンだと思います。では、各紙の論説の強調点などを比較します(「サードビュー」の試み)。各紙の総合面、政治面の記事や社説のタイトルを比較します。
 
都議選の論調比較(「サードビュー」)
 
読売: 「政権批判戦略、限界」(総合面1)
「アベノミクスへの期待票だ」(社説)
「レッテル貼り慎むべきだ」(政治面)
 
都政の課題に一票を投じるのが都議選の本旨のはずですが、読売の論説を見ると、国政与党の経済政策への評価が投票のポイントになったという「現実」を当然視しています。国政野党の民主党などが「レッテル貼り」でしか対立軸が出せていないことを批判。不毛なレッテル貼りは有権者の政治不信を助長しかねないという論点は傾聴に値します。
 
朝日: 「政権批判票、共産へ」(1面)
「『受け皿』作り、全力で競え」(2面)
「野党は対立軸を鮮明に」(社説)
 
朝日は、都議選の出口調査を実施。アベノミクス「評価」が73%(「大いに評価」14%、「ある程度評価」59%)と高評価でした。「評価しない」とした有権者の4割近くが共産党に投票。社説で、「政治に対峙する迫力が必要なのは、都議選での共産党の戦いぶりを見ても明らか」と、対立軸を作れなかった民主党などにゲキを飛ばしています。
 
毎日: 「変わる知事との関係」(総合面1)
「アベノミクスで判断35%」(総合面2)
「民主党の危機的な凋落」(社説)
 
総合面2で「自民、経済優先実る」と大きくタイトルを掲げていますが、出口調査での質問「今回の投票でアベノミクスへの評価を判断材料としましたか?」には「した」36%、「しない」58%という結果でした(6選挙区で有権者240人にアンケート調査)。毎日の論調も、も朝日同様に、民主党などの野党が安倍内閣に対する対立軸を鮮明にする責務があるとしています。
 
日経: 「都議選の低投票率が映す対立軸の不在」
「都民、安定選ぶ」
 
「投票が5割を切っており、自公は都民を十分に振り向かせることができなかった」とし、「政治への関心が低いままでは、長い目でみたとき統治力は必ず落ちていく」との懸念を打ち出しています。良い政治環境は、与野党が政策を競い合い、有権者を引きつけ、切磋琢磨すべきと主張しています。
 
東京: 「おごらず生活者の『都』を」(1面)
「非自民勢力、受け皿なく」(1面)
「自民への指示は本物か」(社説)
 
東京新聞は東京を基盤とした地方紙だけに、読売新聞の論調とある意味で対極にあり、都議選は都政を議論する場なのに、実際はそうなっていないと指摘。安倍首相も都政のテーマに触れず、デフレ脱却の経済政策を訴えることに終始したと批判しました。自民党の強みだった地方では苦戦が続いており、都議選の勝利が本物かどうか、疑問を呈しています。
 
「なんとなく自公」
朝日新聞の都議選出口調査で「アベノミクスを評価」73%でした。日経新聞は、定例の世論調査を実施しており、そこでも「アベノミクスを評価」55%でした(こちらは、聞き方の異なる前回質問より7ポイント下落)。
 
これを見ると、「アベノミクス期待票」が自公に集まったとする読売の論評は妥当という気がしてきます。ところが、毎日の出口調査では「アベノミクスへの評価を判断材料にしていない」が58%で、「した」36%を大幅に上回りました。出口調査の精度には一定の留保が必要かもしれませんが、ここからは、有権者の投票先が「なんとなく国政与党がいい」となった可能性も見えてきます。
 
野党は「違い」を打ち出すこと
日経の世論調査では、「景気回復を実感している」17%、「実感いない」74%で、アベノミクスはまだ期待先行であることがわかります。続く質問で、「アベノミクスの効果は続く」36%に対して、「続かない」43%となっており、円と株の相場乱高下を受けて、安倍政権の経済政策の将来について不安視する声も出てきています。
 
“アベノミクスが本当に成功するかはまだわからない。しかし他に選択肢はないし、国政与党支持で良いのではないか”。それが都議選を覆った「空気」だったのかもしれません。投票率の低さは、都議レベルの争点が不明瞭な中、国政与党の政権運営を「様子見」する有権者が大勢だったことも影響したと思います。
 
新聞各紙が論じる通り、野党には健全な政策争点の「違い」を打ち出す責務があります。「自民党は36.1%の得票率で46.5%の議席を獲得した。棄権した人まで含むと、全有権者の約15%の票しか得ていない」とする東京新聞の論調(1面)と合わせると、参院選に向け、野党がすべきことが見えてきます。
 
一例として、日経の世論調査の最後の質問は、原発再稼働についてで、「賛成:」34%、「反対」54%です。野党は、自公との「違い」を鮮明にすることで有権者を引き付け、国政与党に「なんとなくいい」と全権委任するのではない、成熟した世論形成に貢献する責務があります。

(文責:梅本龍夫)



  1. 【独自取材】 「自民全員当選、第1党 都議選 民主第4党転落 維新、惨敗2議席 公明も全勝、共産伸長」
       http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/20130623-OYT1T00569.htm
  2. 【独自取材】 「スノーデン氏、香港出発 モスクワ経由、南米行か」
       http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130623-OYT1T00493.htm
  3. 【独自取材】 「沖縄、慰霊の日」
       http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130623-OYT1T00515.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「自公完勝、過半数 民主第4党、共産下回る 都議選 みんな7、維新2 自民、参院選へはずみ 投票率下落、43.50%」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306230500.html
  2. 【独自取材】 「沖縄慰霊の日、傷み忘れぬ 戦後68年 知事『平和主義堅持を』」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/SEB201306230076.html
  3. 【解説記事】 「政権批判票、共産へ 編集委員・峰久和哲」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306230497.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【独自取材】 「自民全勝、民主第4党 都議選 共産党倍増、第3党 公明も全勝 維新は敗北」
       http://senkyo.mainichi.jp/news/20130624ddm001010052000c.html
  2. 【独自取材】 「安倍政権、参院選へ弾み」
       http://senkyo.mainichi.jp/news/20130624k0000m010066000c.html
  3. 【独自取材】 「なお続く沖縄の苦悩 慰霊の日 『普天間、県外へ』」
       http://mainichi.jp/select/news/20130624ddm001040062000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【政府広報】 「設備更新、減税で促進損失、前年分から還付 減価償却、一括で計上 法人税額を圧縮 経産・財務省検討」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDF23009_T20C13A6MM8000/
  2. 【独自取材】 「都議選、自公が圧勝 82人全員当選 民主大敗、第4党に 参院選前に明暗」
       
  3. 【世論調査】 「内閣支持、横ばい66% 経済政策『評価』は55% 本社世論調査」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS23016_T20C13A6MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「自民全勝、第1党 民主、維新は惨敗 共産倍増、第3党」
       http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013062490070216.html
  2. 【独自取材】 「投票率43.50%、2番目の低さ 非自民勢力、受け皿なく」
       
  3. 【解説記事】 「おごらず生活者の『都』を」
      

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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