2013.06.20 thu

新聞1面トップ 2013年6月20日【解説】2つの核の「過剰」

新聞1面トップ 2013年6月20日【解説】2つの核の「過剰」


【リグミの解説】

本日の新聞1面トップは、2つの「核」のテーマが同時に浮上しました。1つは、「原子力規制委員会の新基準決定後の動き」です。そしてもう1つは、オバマ大統領による「戦略核1/3削減」を目指す演説です。
 
原発新規制基準
各紙とも複数ページで詳しく報道しています。主要な記事タイトルを併記し、新聞報道の「ビュー」の違いを見ます。
 
読売: 「原発、立地安全を最優先」(1面)
「原発再稼働に道筋」(総合面)
「効率的で柔軟な審査が必要だ」(社説)
 
原子力規制委の新基準が安全を最優先していることを前提としつつ、「再稼働」を急ぐべきという「ビュー」(主張、視点)は変わっていません。
 
朝日: 「新基準決定 審査に半年か」(1面)
「立地自治体『不十分』の声も」(社会面)
 
審査に時間がかかりそうなことと、立地自治体の声を一部伝えていますが、全体に扱いは限定的で、規制委の新基準の内容と運用について、明確な「ビュー」を欠いた報道にとどまっています。
 
毎日: 「原発の選別加速」(1面)
「見えぬ政府戦略」(総合面1)
「審査の質確保、課題」(総合面2)
「4社、申請『先陣争い』」(6面)
「『福島の声聞いて』 住民悲痛 他自治体、歓迎も」(社会面)
 
「西日本に多い加圧水型の原発が選別され、老朽基は廃炉が迫られること」「政府の原発政策の基本が不透明な問題指摘」「規制委の体制が弱いため審査の質が問われること」「電力会社が申請に走る姿」「原発自治体の様々な反応」などを網羅。原発の新基準が生み出す「景色」が一望できる内容になっています。特に、「福島」「柏崎刈羽」「浜岡」「伊方」「東海第2」「高浜」「泊」「志賀」「川内」「玄海」「敦賀」の各地元を取材した姿勢は評価できます。
 
日経: 「原発、来夏に複数稼働」「『安全文化』培う出発点」(総合面2)
 
基本的には、読売と同様に、経済的観点から再稼働の必要性を主張。審査の進み方を読み、現実的なタイミングとして来夏再稼働を予測。同時に「安全文化」の重要さを解説しており、この点が読売との「違い」となっています。
 
東京: 「大飯、運転継続容認へ」(1面)
「審査強化に専門性必要」(総合面1)
「『大飯前例』再稼働狙う」(総合面2)
「原発新規制基準の要旨」(4面)
 
原発批判の「ビュー」で一貫した報道姿勢ですが、今回は客観的事実の報道に力点を置いています。原発報道においてもファクト(事実、客観的情報)の積上げを大事にしており、今回も唯一、「原発新規制基準の要旨」を掲載しています。
 
核軍縮
一方のオバマ大統領の演説については、下記の通りです。
 
読売: 「核軍縮で指導力回復図る」(国際面)
朝日: 「2期目オバマ、『遺産』意識」(2面)
毎日: 「指導力回復図る」
日経: 「追加核軍縮、ロシアの壁」(国際面2)
東京: 「米大統領、ロシアと交渉へ」
 
ロシアが交渉に乗る可能性が不透明であり、新聞記事を表面的に追う限りオバマ氏の発言は「言いっぱなし」になる可能性も感じさせます。ただその中で、朝日が2期目のオバマ氏が「レガシー」(歴史に残る遺産)を意識して発言しているという報道に注目しました。
 
2つの核
朝日は、原発新規制基準の報道では精彩を欠いていますが、オバマ氏演説を「レガシー」の観点で報道したことは独自性がありました。それ以上に、35面で「核兵器と原発」を比較した特集記事「核とをいのちを考える」を掲載したことは評価できます。
 
核弾頭の数と原発の設備数を示した世界地図を見ると、原発という核の平和利用は、核兵器の拡散のリスクと背中合わせであることが直感的にわかります(参照:朝日デジタル)。
 
安倍首相は、原発の輸出に熱心に取り組んでいますが、「安全」の問題は原発事故だけではありません。核拡散のリスクも強く意識する必要があります。
 
「2つの核」を見て実感すること。それは人間がもたらす「過剰」です。原発は、過剰なぐらい「安全」を強調し対策を打たなければならない、ある意味で不条理な設備です。そして、核兵器は、その過剰な破壊力によって、事実上使用できない兵器の典型です。それにもかかわらず、ロシアの核弾頭数は8500、米国も7700です。
 
「過剰」を手放せる社会こそ、本当の意味で「安全」で「平和」なのだということがわかります。

(文責:梅本龍夫)



  1. 【独自取材】 「原発、立地安全を最優先 再稼働審査 伊方・川内、先行か」
       http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130619-OYT1T01439.htm?from=ylist
  2. 【独自取材】 「海自『P1』飛行停止 エンジン不具合 監視体制影響も」
       http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130619-OYT1T01478.htm?from=ylist
  3. 【独自取材】 「米露戦略核1/3削減 各1000発に オバマ大統領が方針」
       http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130619-OYT1T01265.htm?from=ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「戦略核さらに1/3削減 オバマ氏演説 配備1000発程度に ロシアと交渉へ」
       http://www.asahi.com/international/update/0619/TKY201306190514.html
  2. 【独自取材】 「6原発、再稼働申請へ 新基準決定 審査に半年か」
       http://www.asahi.com/business/reuters/RTR201306190060.html
  3. 【企業広報】 「KDDI、電力小売りへ 家庭向け検討 電話とセット割引も」
       http://www.asahi.com/business/update/0619/TKY201306190480.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【独自取材】 「原発の選別加速 加圧水型有利に 規制委新基準決定 老朽基、迫る廃炉」
       http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20130620k0000m020104000c&inb=mo&fm=knrn
  2. 【政府広報】 「法科大学院 統廃合へ『法的措置』 検討会提言 試験、3科目に減」
       http://mainichi.jp/select/news/m20130620k0000m040093000c.html
  3. 【独自取材】 「米、戦術核も削減提案 オバマ大統領 露と交渉目指す」
       http://mainichi.jp/select/news/m20130620k0000m030112000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【企業広報】 「エコカー電池、日独連合 ボッシュ・GSユアサ・三菱商事 開発・販売合弁 走行距離2倍」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD190DN_Z10C13A6MM8000/
  2. 【連続企画】 「ものづくり、屋台骨揺らぐ 社会と向き合えぬ実学 ~大学は変われるか―多様化の先は5.」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDZO56414660Q3A620C1MM8000/
  3. 【政府広報】 「政策経費、今年並み 2年間 税増収分で景気対策 中期財政計画」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS1903L_Z10C13A6MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「『聖域』死守は半数以下 政府筋 TPPで譲歩方針 『工業品輸出増も必要』 農産品5分野」
       http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013062090071114.html
  2. 【連続企画】 「復権の営み、道半ば 『普天間移設先の命、軽視』 ~憲法と、第3部 沖縄の怒り(下)」
       
  3. 【独自取材】 「大飯、運転継続容認へ 9月まで 新基準、一部満たさず」
       http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013062002000109.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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