【リグミの解説】
「川重、社長を解任」
本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、日経がそろって「川重、社長を解任」の記事です。三井造船との経営統合交渉を独断で進めたとして、川崎重工の取締役会が社長を解任しました。従来の日本企業は、取締役会は形骸化し、社長に強大な権限が集中するのが典型的でしたが、今回の川重では取締役会が社長を解任しました。何が起きたのでしょうか。
読売： 「川重、35分の解任劇 反対派、相乗効果に疑問」（経済面）
朝日： 「名門、35分のクーデター スタンドプレー、不信招く」（3面）
毎日： 「川重クーデター35分 反対派『統合益なし』 交渉支援、銀行も衝撃」（経済面）
日経： 「総会前、異例の造反劇 10対3で解任決定 経営統合『取締役会を軽視』」
「ドラマ」の背景が大事
読売、朝日、毎日は、35分間の取締役会でドラマが起きたといった週刊誌的な見方で報じています。これに対して、企業関連の記事だけに、日経の解説が一番客観的で内情を正確に伝えていると思います。川重は、「事業の集合体という特有の企業構造」を有しており、「非造船」役員が強硬策を取りました。
役員13人は、全員が社内出身で、部門の利益代表者を兼ねています。今回解任された社長以下3人の役員はすべて「ガスタービン・機械」の出身です。解任動議に賛成した残り10人は、「車両」4人、「モーターサイクル＆エンジン」1人、「航空宇宙」1人、「精密機械」1人、「プラント・環境」1人、「航空海洋」1人、そして「ガスタービン・機械」のうちの1人も入っています。
造船などの船舶海洋事業は連結売上高の約1割。経営統合は事業強化にはつながりますが、人員の増大による人件費負担が増大することなどの難点があった、と日経は伝えています。この情報だけでは、取締役会決議の経営判断としての妥当性は何とも言えない感じがします。野党にあたる部門利益代表者たちが連携し、過半数未満の与党の法案を蹴ったという図だけが浮かんできます。
ガバナンスとコンプライアンスの問題
日本企業のガバナンス（企業統治）の問題は、外部の目が入らないことです。川重も社外取締役がゼロというのは、旧態依然とした姿です。さらに、経営統合交渉には守秘義務が伴うことは理解できますが、解任劇を推進した経営陣の「説明責任」は不足しています。
川重のIR資料を見ると、「（解任された）3名が他の多数の取締役の意向に反した業務執行を強行しようとするなど取締役会を軽視した行動があった。これらの行為は、コーポレートガバナンス及びコンプライアンスの見地より、不適切といわざるを得ないと判断し、苦渋の決断をした」とあります（参照：
川崎重工HP）。
21世紀型の日本企業の範を示す
川重は、定時株主総会を目前に控えています。今回の解任劇で何が本当の問題だったのか、コーポレートガバナンス及びコンプライアンスを適切にするとはどういうことなのか、何よりも企業を繁栄させる戦略判断はどうあるべきなのか。
株主が聞きたい本質的な質問はいっぱいあります。ガバナンスやコンプライアンスは必須です。しかし、経営には「その先」が必要です。老舗の日本企業が、未来を切り開く力を持っていることを示す意味でも、従来の紋切型の回答を捨て去り、「異次元の説明責任」に踏み込み、21世紀型の日本企業の「あるべき姿」の範を示すべきです。
社内事情や内紛を糊塗するだけでは何も生まれません。ダイナミックに動くグローバル経済の中で、魅力に満ち、わくわくする戦略ストーリーを語り、実行できる経営陣の登壇を希望します。
（文責：梅本龍夫）
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- 【独自取材】 「川重、社長を解任 三井造船と合併、白紙」
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- 【独自取材】 「川重、社長を解任 三井造船統合白紙に 『独断で交渉進めた』 村山常務昇格」
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http://mainichi.jp/select/news/m20130614k0000e010163000c.html
（毎日jp http://mainichi.jp/）
- 【独自取材】 「川重、統合白紙に 三井造船との交渉 社長を解任 後任、村山氏が昇格」
http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD130QY_T10C13A6MM8000/ - 【独自取材】 「リスク回避、世界で拍車 新興国市場に動揺 黒田緩和前に戻る 円、一時93円台／日経平均843円安」
- 【政府広報】 「経済再生へ財政健全化 諮問会議、骨太方針を決定」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS13047_T10C13A6MM8000/
（日経Web刊 http://www.nikkei.com/）
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2013.06.14 fri
