2013.06.11 tue

新聞1面トップ 2013年6月11日【解説】政治の王道

新聞1面トップ 2013年6月11日【解説】政治の王道


【リグミの解説】

本日は、読売と朝日が定例の世論調査を掲載しています。
 
安倍政権の支持率
読売: 支持67%(5月72%、4月74%) 不支持24%(5月20%、4月17%) 
朝日: 支持59%(5月65%、4月60%) 不支持20%(5月17%、4月17%)
 
安倍政権の支持率が高いことでは両紙とも一致していますが、読者層の違いを反映してか、読売の方が一貫して高い支持率です(ただし、不支持も朝日より高め)。読売は3ヵ月連続で支持が漸減しています。これが誤差の範囲なのか、不支持率の漸増と合わせてトレンドを示すのか明言はできません。
 
経済政策の評価
ただ、「成長戦略」への失望感と、規制緩和への期待感(安倍首相の設備投資減税への言及)で株価の乱高下している様子に象徴されるように、有権者は依然として「経済再生」のプロセスに一番着目しているのだと思います。
 
読売: 
「安倍内閣の経済政策を評価しますか」 評価する59% 評価しない26%
「安倍内閣のもとで景気の回復を実感していますか」 実感している17% 実感していない75%
 
朝日:
「安倍首相の経済政策で日本経済が成長することを期待できると思いますか、期待できないと思いますか」 期待できる51% 期待できない31%
「安倍政権になってから、あなたには景気が回復したという実感がありますか。ありませんか」 ある18% ない78%
 
両紙の今回の世論調査でも、アベノミクスは「期待先行」で「生活実感」は伴っていない結果が出ています。
 
筆者が消費財関連の中小企業の経営者の声を聞いたところ、「消費増税もにらんだ不動産などの大型の消費にはお金を使う面も見られるが、その分日用品で要・不要の選別が進み、かえって売り上げが厳しくなっている、との反応でした。統計的な世論調査と並行して、経営者や消費者の景況感をインタビューし、実態把握する必要があると思います。
 
参院選の投票で重視する政策・争点
読売:(複数回答)
景気や雇用86% 社会保障84% 外交や安全保障71% エネルギー政策68% 消費税などの税制改革62% 憲法改正49% 選挙制度改革48%
 
いくつでも選べる回答方式のため、わかりにくい結果となっていますが、「経済」「外交」「エネルギー政策」に比べて、「憲法」「選挙制度」の関心が低いことはわかります。「経済」で自民党が支持されている現状で、「憲法」を争点に挙げても、選挙結果は自民党の憲法改正案全体を支持したことにはならないと予想されます。
 
自民党は、憲法の位置づけを大きく変えようとしています。そのことを資料としては明確に提示していますが、改正案の文言に対して、議員による口頭での説明は、より「ソフト」なもので、争点をぼかしています。また、改正案全体を十分に説明し、さまざまな立場の人々との意見交換や議論をしていません。参院選で「憲法」の全体観を争点にするのは時期尚早です。国の基軸を定めた憲法の議論は、まだ始まったばかりです。熟議のプロセスを大切にする必要があります。
 
原発政策
 
朝日:
「いま停止している原発の運転を再開することに賛成ですか。反対ですか」 賛成28% 反対58%
「安倍政権は、日本経済の成長のためだとして、原発を積極的に利用する方針です。こうした方針に賛成ですか。反対ですか」 賛成27% 反対59%
 
朝日は、安倍政権の原発政策を批判する立場で世論調査の質問を設定していると思われます。上記の回答結果を1面2番記事に大きく掲げています。2番目の質問に関して、内閣支持層と不支持層での回答も掲載しています(内閣支持層:「賛成35%」「反対51%」、不支持層「賛成12%」「反対79%」)。
 
原発再稼働を積極的に主張している読売の読者が、上記の質問にどう答えるか興味がありますが、読売は前月も含めて、質問項目に入れていないため不明です。
 
自民党・安倍政権の改憲推進議員は、96条の改憲要件を先行改正するロジックとして、「国民が改憲の是非に意思表示できる機会を増やすことが大切だ」と主張しています(参照:東京新聞1面2番記事での古屋圭司・国家公安委員長(96条改正議連会長)のインタビュー)。
 
これは一見妥当に聞こえる理屈ですが、自民党の本音を反映しているとは思えません。憲法のような「究極のテーマ」について国民の意志を確かめる前に、国民的議論を喚起し、その意見を集約すべき現実的テーマはたくさんあります。
 
昨夏の民主党政権時に成された「2030年代の原子力エネルギー政策」についてのパブリック・オピニオンなどの情報開示も進んでいません。自民党・安倍政権は、憲法の前に原発政策の原案を国民に示し、その上で国民的議論を再度促すべきです。
 
その上で、国民投票に準じる活動をしてはどうでしょうか。憲法改正の発議の前に、国の重要な政策に国民が積極的に関与する成熟民主主義のプラクティスベースを作るのが、政治の王道だと思います。
 
(文責:梅本龍夫)



  1. 【世論調査】 「自民44%、維新後退5% 参院選投票先 本社世論調査、民主横ばい7% 内閣支持67%」
       http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080116-907457/news/20130610-OYT1T01032.htm?from=blist
  2. 【政府広報】 「溶融炉の回収、20年以降 福島第一 原子炉別に廃炉計画 工程表改訂案」
       http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130610-OYT1T00966.htm?from=ylist
  3. 【独自取材】 「株636円高 NY円一時99円台」
       http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130611-OYT1T00132.htm?from=ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「東証反転、636円高 市場から催促、首相が投資減税表明」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306100659.html?ref=twitter
  2. 【世論調査】 「成長に原発活用、反対59% 再稼働反対も58% 本社世論調査」
       http://www.asahi.com/senkyo/senkyo2013/news/TKY201306090137.html
  3. 【独自取材】 「CIA元職員が内部告発 米ネット極秘調査 『権利侵害許せず』」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306100686.html?ref=twitter

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【独自取材】 「米、協調演出後に『本題』 米中首脳、膝詰め8時間 サイバー『警告』周到に」
       http://mainichi.jp/select/news/20130611k0000m030053000c.html
  2. 【政府広報】 「燃料回収1年半前倒し 福島第1原発 廃炉工程表 20年度に開始」
       http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130611ddm001040045000c.html
  3. 【独自取材】 「東証終値636円高」
       http://mainichi.jp/select/news/m20130611k0000m020041000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【企業広報】 「高級鋼板、中国に新工場 新日鉄住金 日本車増産に的 300億円投資、供給4割増」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD060S0_Q3A610C1MM8000/
  2. 【連続企画】 「自由と安定のはざまで 電力の『解放宣言』 ~規制、岩盤を崩す エネルギーの明日へ5.」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDF0600T_X00C13A6MM8000/
  3. 【政府広報】 「物価連動債、10月発行 財務省が再開 償還時の元本保証」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS1003N_Q3A610C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「原子炉など処分場未定 廃炉作業遅れ懸念 中程度汚染 事業者も決まらず」
       http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013061190071404.html
  2. 【連続企画】 「権力縛る機能後退 ~検証・自民党改憲草案―その先に見えるもの6.」
       
  3. 【独自取材】 「課題山積のまま前倒し 核燃料取り出し、20年度前半にも 福島第一原発」
       http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013061102000101.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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