2013.05.28 tue

新聞1面トップ 2013年5月28日【解説】攻めと守り

新聞1面トップ 2013年5月28日【解説】攻めと守り


【リグミの解説】

社説の比較
本日の新聞は、社説を比較します。
 
読売: 「ひるまずアベノミクスを前に 波乱含みの株価」
           「安全意識を欠く研究者の対応 放射能漏れ事故」
朝日: 「賛否の二元論を超えて 小平住民投票」
           「公取委がルールづくりを 公的支援」
毎日: 「前のめりでは危ない 原子力協力」
           「本質そらす責任転嫁だ 橋下氏の説明」
日経: 「飛躍へ足場が整うミャンマーとの関係」
           「放射能扱う責任をかみしめよ」
東京: 「科学者よ、一市民たれ 放射性物質漏れ」
           「民意知りたかった 住民投票不成立」
 
株式市場の乱調とアベノミクス
社説の注目テーマを3つ選びます。まず経済です。読売の社説と日経の1面トップ記事は、共にアベノミクス応援の内容になっています。読売は「株乱調にひるまず3本の矢を推進せよ」と政権を鼓舞、「民間企業も株価が急騰した事実を前向きに受け止め、攻めの経営を進めよ」と背中を押す内容です。これに対して日経は、株乱調はプロ投資家、特に3種類のファンドの行動が市場のかく乱要因になったのであって、実体経済は底堅く株価は調整局面だとしています。
 
今回の株価急落をもって安倍政権の経済政策の是非がただちに論じられるとは思いません。ただ、懸念が2つあります。まず、株高を演じてきたのが、もっぱら短期的な利益を求めるプロ投資家によるものではないかという点。本当に底堅い株高は、日本経済のファンダメンタルズを評価し、日本株を長期保有することで成り立ちます。残念ながらそういう側面が、まだ表に見えてきていません。市場は、日本の復活がいつ本物となるか、推移を見守っているのではないでしょうか。第3の矢の成長戦略の内実と、第4の矢とも言われはじめている財政再建への取り組みがカギを握りそうです。
 
懸念の2つ目は、グローバル経済の入り組んだ実態です。元々アベノミクスは、「風が吹けば桶屋が儲かる」式の間接ロジックで成り立っています。基本の想定の要素のひとつでも動きが狂うと想定外のことが次々と起きる可能性があります。大胆な金融緩和の結果、長期金利が上昇する現象も「想定外」であったと思います。世界のあらゆる思惑やローカル事情が入り組んで影響しあっているグローバル経済では、すべての想定内に納めて予定調和の経済成長を達成することは不可能です。大胆な政策を打つのであれば、経済を破綻させない調整能力を片方に堅持することが不可欠です。
 
科学者の使命とマネジメント
注目社説テーマの2つ目が「原子力関連の事故」です。福島第1原発事故の教訓がまったく生かされていない事態が続出しています。読売と東京の社説は共に、科学者の姿勢を厳しく指摘しています。特に、「安全を最優先にできないならば、いくらそれが便利でも、科学を名乗る資格はない」との東京新聞の指摘は、重いものがあります。
 
ただ実際には、科学は「真理の探究」を最優先しています。警報が鳴っても実験を継続したことが、そのことを象徴しています。そして今日の科学を含む専門分野は、どんどん狭い分野に特化し、深堀りする傾向があります。原子力を扱う実験施設、商業施設では、全体システムを理解し、統合的に管理する科学者・専門家・マネジメントの育成が急務だと思います。
 
当事者意識を持った民主主義
3つ目の注目社説が「小平市の住民投票」です。こちらは、朝日と東京が取り上げています。50%以上の投票率でなければ有効とならないというリールが設定された中、投票率は35%に留まりました。37%の投票率で選出された小平市長が「50%ルール」を後から付けたため、35%でなぜ無効で開票もされないのか、素朴な疑問が生じる結果となりました。
 
ただ、両紙とも指摘していますが、むしろ今回の住民投票では、「投票しないことが意思表明」になる側面があったことを問題です。「50%に達しなければ無効」なのだから、今回提起されたテーマを却下したかった人は、投票しないという選択をした可能性があります。また朝日は、投票所に行くと「道路建設の見直し賛成」と見られることを心配して棄権した人もいるのではないかと示唆しています。
 
今回の小平市の住民投票は、「お任せ民主主義」と決別し、「当事者意識を持った民主主義」に移行する試金石になるものでした。国政レベルでは、改憲論議が進んでいます。改憲となれば、かならず国民投票が行われます。投票が行われるはるか前に、そのテーマの問題点や、投票制度の問題点は浮上しているものです。民主主義は、与えられた基本的な権利である投票権を行使することが大前提にあります。投票しないことは不利益につながる、投票することは常にプラスを生む、という制度設計とマインドの育成が必要だと思います。

(文責:梅本龍夫)



  1. 【政府広報】 「日本食『伝道師』を育成 クールジャパン 行動計画原案 国際会議で文化発信」
       http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130527-OYT1T01623.htm?from=ylist
  2. 【独自取材】 「株終値469円安 1万4142円 荒い値動き続く」
       http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130527-OYT1T00815.htm?from=ylist
  3. 【政府広報】 「インド地下鉄に710億円」
       http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130527-OYT1T01493.htm?from=ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「成年被後見人に選挙権 改正公選法成立 13.6万人権利回復 不正防止策盛る」
       http://www.asahi.com/politics/update/0527/TKY201305270198.html
  2. 【政府広報】 「参院選7月21日投票 政権、国会延長しない方針」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201305270630.html?ref=twitter
  3. 【独自取材】 「慰安婦発言撤回せず 橋下氏会見 外国記者にも持論」
       http://www.asahi.com/politics/update/0528/OSK201305270138.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【独自取材】 「被ばく最大82ミリシーベルト 1歳児甲状腺、『危険値』下回る 福島30キロ圏内」
       http://mainichi.jp/select/news/20130528k0000m040100000c.html
  2. 【独自取材】 「『誤報』譲らず 会見2時間半 特派員協会で橋下氏 慰安婦問題『報道され痛恨の極み』 政治責任『参院選の結果で議論』 女性蔑視『戦場の性を問題提起』」
       http://mainichi.jp/select/news/20130528ddm002010080000c.html
  3. 【独自取材】 「EU武器供与解禁へ シリア反体制派に 2ヵ月猶予」
       

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【連続企画】 「『3つのファンド』攪乱 株価指数先物が主戦場 実体経済は底固く ~市場乱調(上)」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDZO55546810Y3A520C1MM8000/
  2. 【政府広報】 「FTA比率7割に 成長戦略素案 政府、貿易額18年目標」
       http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2703J_X20C13A5MM8000/?dg=1
  3. 【政府広報】 「強制適用、当面見送りへ 国際会計基準 金融庁、時期示さず」
       http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC2700Z_X20C13A5MM8000/?dg=1

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「市民の声、原動力 八千代市長選、無所属新人が勝利 ハコモノ行政『ノー』 自公推薦候補、敗れる」
       http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013052890071230.html
  2. 【連続企画】 「故郷描く色彩、憂い映す ~犠牲の灯り 第4部『若さの滴』 1.黒いと暗い」
       http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/akari/
  3. 【行政広報】 「都議会、通念に拡大へ 来年にも 災害即時対応可能に」
       http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013052802000128.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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