2013.05.23 thu

新聞1面トップ 2013年5月23日【解説】問:続けるか、続けないか

新聞1面トップ 2013年5月23日【解説】問:続けるか、続けないか


【リグミの解説】

「センミツ」と規制事業
ベンチャー・ビジネスで成功するのは「センミツ」と言われます。ベンチャー・キャピタルに持ち込まれる案件が1000件あるとして、継続検討に値するのが約30件。そのうち、投資判断が出るのが10件。投資後に投資額を超えるリターンを生むケースが3件。この3件の中に大化けする企業が1社でもあれば、ベンチャー・ファンドは利益を確保する。この1000件で3成功事例が「センミツ」の意味です。
 
新しいことを仕掛けて成功することは簡単ではない、ということを象徴する言葉です。世の中には一方で、立ち上げれば確実に儲かるビジネスもあります。ある種の規制事業などはその典型となります。原子力発電はどうでしょうか。国の大量の補助金が投与されてきたことを考えると、着実に成功する事業のひとつであったといえるかもしれません。
 
事業の終え方
その原発事業が、事業の終え方がわからず、苦悶しています。原子力規制委員会が、日本原電の敦賀原発第2号機の直下に活断層があると認定し、再稼働できない状況になりました。日本には、廃炉を決める法律も、明確な手順もありません。日本原電は、「到底受け入れられない」と主張し、科学的根拠の説明などを求める公開質問状を規制委員長に提出しました。その前には、規制委員会の専門家に直接「厳重抗議」の文書を送りつけ、物議を醸しています。
 
苦労をして始めた商売は、何とかものにしたいと考えるのが人情です。小売・飲食の企業で、数々の新規事業の立ち上げに関わった経験でも、明らかに先行きの暗い事業でも、経営者や事業責任者は「あと少し」との思いを捨てられず、ずるずると赤字を増やしていくケースが結構ありました。
 
こんな人情があるからでしょうか、金融業には、無駄な延命のための追加融資、いわゆる「追い貸し」を戒める言葉があります。「センミツ」の厳しさを知るベンチャー・キャピタリストでも、思い入れのある投資先には、つい「追加投資」などをしがちです。始めるのが難しく、終えるのも難しいのがビジネスです。
 
原発を継続したい理由
まして規制事業で、大量の補助金が入る原発事業です。安全面などに深刻な問題があり、事業の在り方に対する世間の厳しい批判があっても、事業継続さえできれば利益を得られる人々が多数います。規制委に対する批判が自民党からも出ていますが、根っこは同じ理由だと思います。福島第1原発事故で、規制行政の組織変更がなければ、日本原電も安泰に敦賀原発を維持できたはずです。原発推進の当事者たちが、規制委を激しく攻撃するのは、規制委の判断次第で自分たちの生死が決まることになりかねないからです。
 
社会全体の活性化
ベンチャー事業の「追加投資」や、一般の商売への「追い貸し」を戒めるのは、より成功する事業に事業資金などの経営資源を回すことが、社会全体の活性化につながるからです。金融機関が見込みのない事業に資金と人材を集中していては、経済の血流が滞ります。
 
税金や電気料金で成り立っている原発事業も同じことが言えます。仮に原発を国のエネルギー政策の軸に据え続けるのだとしても、老朽化した原発、安全面に問題を抱える原発は、着実に廃炉にしていく必要があります。むしろ原発推進派こそ、積極的な廃炉の道筋を提示することで、将来のより安全で効率良い原発を新設できる可能性が生まれると考えるべきです。
 
責任をとる政治
日本原電の現状は深刻です。東京新聞の1面トップ記事によると、敦賀原発2号機の廃炉の伴い発生する放射性廃棄物の処分地が確保されていません。日本原電は、廃炉にしたくてもできないともいえます。日本原電の無責任な経営実態は大いに問題視すべきです。しかし、原発事業は国家の責任において決着をつけない限り、先に進まないのも事実です。
 
原子力規制委は、あまたの批判や横槍に抗して、「安全第一」という国家の責任の取り方を、身を持って示しています。始めたものをどう終えるのか。日本の未来の活性化のために、「追加投資」や「追い貸し」をやめる決意をし、廃炉への全体の道筋をつけるのが「責任をとる政治」です。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 【独自取材】 「課税逃れ防止、国際ルール G8首脳、作成合意へ 『租税回避地に子会社』念頭」
       http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130522-OYT1T01539.htm?from=ylist
  2. 【政府広報】 「敦賀、安全審査行わず 2号機、活断層認定で 規制委員長方針」
       http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130522-OYT1T00543.htm
  3. 【独自取材】 「ツリー特別な夜 1周年記念『12変化』」
       http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130522-OYT1T01353.htm?from=ylist

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【政府広報】 「金利高騰、日銀が抑制策 黒田総裁『完全制御はできず』」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201305220793.html
  2. 【独自取材】 「学ばない学生、奨学金取り消し 586人、大学の判断覆す 学生支援機構」
       http://www.asahi.com/edu/articles/TKY201305220611.html
  3. 【企業広報】 「制約社員、臨床研究に関与 論文で身分明かさず 高血圧治療薬」
       http://www.asahi.com/national/update/0523/TKY201305220614.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【独自取材】 「危険な『脱法ハウス』 消防法違反 都内で増加 250平方メートル木造に窓なし37室・火災報知器、設置せず」
       http://mainichi.jp/select/news/20130523ddm001040037000c.html
  2. 【検察広報】 「元警部補を処分保留 地検『任意で捜査』 富山殺人放火」
       http://mainichi.jp/select/news/20130523k0000m040021000c.html
  3. 【政府広報】 「再稼働審査は困難 敦賀原発 原電、規制委に質問状」
       http://mainichi.jp/select/news/20130523ddm001040049000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【政府広報】 「ミャンマーで電力開発 政府、全土の計画立案 ODA1000億円 包括支援、首脳合意へ」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDE22004_S3A520C1MM8000/
  2. 【企業広報】 「NTT『確定拠出』導入 企業年金、グループ9万人対象 国内最大級」
       http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD220OJ_S3A520C1MM8000/?dg=1
  3. 【政府広報】 「『長期金利抑制に尽力』 日銀総裁、弾力的に資金供給」
       http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2202D_S3A520C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「原発ごみ、行き場なし 処分地未定、2万トン放置も 敦賀『廃炉勧告』」
       http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013052302000112.html
  2. 【独自取材】 「女性は道具じゃない 市民団体が抗議集会 橋下氏発言」
       http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013052302000111.html
  3. 【独自取材】 「1年彩る12の灯 スカイツリー記念点灯」
       http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013052390071025.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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