【リグミの解説】
本日の読売新聞と朝日新聞1面と社説を見て、各紙の着目点や論点の比較をします。
読売：憲法96条改正
1面2番記事 「96条先行の是非、焦点 衆院憲法審 環境権も論点に」
社説 「憲法96条改正 発議要件緩和の議論深めたい」
「内外情勢の変化に的確に対応するには発議要件緩和が必要との考え方は支持できる」（社説）とし、96条の先行改正による憲法改正の世論形成を企図しています。
しかし、「現実に憲法を合わせる」のでなく、「憲法に現実を合わせる」のが原則です。その上で、憲法と現実のどこに根本的な食い違いが生じているのかを熟議するのが本筋です。
読売の社説は、96条の改正に反対する政党が「立憲主義を持ち出すのは的外れだ」とも主張していますが、その論拠が明確に示されていません。憲法とは「国民の人権を保障するために国家を縛るもの」とする立憲主義の基本を押えない改憲議論はあり得ません。
民主主義の成熟を証明すること
かつて憲法を論じること自体がタブーの時代がありました。日本の憲法が改正しにくい硬性憲法だと言う議論も、憲法を論じられない空気が長く日本社会を覆ってきた歴史的事実と折り重なっています。憲法を自由に論じられるようになったことは、日本社会が成熟してきた証ととらえることもできます。
それを真に良き変化とするのが「熟議」です。憲法96条を参院選の争点にして、勢いで一気に憲法改正を既成事実化しようとするのは、国民の賢明さを信用しない未熟な政治と言わなければなりません。
朝日：北朝鮮と地域問題
1面3番記事： 「中国4大銀が送金停止 北朝鮮向け、制裁理由に」
社説： 「歴史認識 孤立を避けるために」
中国が北朝鮮への具体的制裁に動いていることを裏付ける1面記事と、韓国の朴大統領の米国訪問時の日本批判についての社説です。
北朝鮮が危険な賭けに出ている状況下で、本来強力な同盟関係にあるべき日韓が「歴史認識」で角突き合わせなければならない本当の理由は何でしょうか。日本側に対立を煽るような言動を慎むように求め、韓国側にも冷静な対応を望む、とする朝日の社説は一応のバランスを示してはいます。
しかし、こちらも読売同様に、現実にどう政治を対応させるかを優先しており、問題の本質を突いていません。そもそもなぜ「歴史認識問題」が繰り返されるのか。日本の立場、韓国の立場、中国の立場を客観的かつ批判的に棚卸しする必要があります。「客観的」でなければならいのは、片側に立った主張をしている限り、まず解決はあり得ないからです。「批判的」視点を求めるのは、いくら客観的に見たところで、「国によって歴史認識に違いがあるのは当然」といった認識に留まれば、結果として対立を是認することになるからです。
拳と握手
中国や韓国は、日本はドイツを見習えと言います。その言は当っています。しかしそれであれば、中国や韓国はフランスを見習う必要があります。戦後ドイツがEUの中軸となり、欧州平和の基盤づくりに大きく貢献できているのは、ドイツがナチスの歴史を反省し続けてきた事実と、激しく争ってきたフランスが戦後のドイツを認め、積極的に手をさし伸べ受け入れてきた事実の両方があるからです。拳は一人で上げられますが、握手は両者が手を差し伸べることで初めてできるのです。
（文責：梅本龍夫）
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http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201305090769.html?ref=twitter
（朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/）
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.http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013050901001692.html
（TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/）
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2013.05.10 fri
