改憲手続きについての調査
本日の新聞1面は、3紙が調査記事です。読売新聞の衆参両院の国会議員へのアンケート調査で憲法96条改正について尋ねています(439人回答、回答率61%)。一方、朝日新聞は全国の有権者への郵送世論調査です(有効回答2194件、回収率73%)。
読売:
「まず改正すべきだ」(高い順)=日本維新の会83%、みんなの党79%、自民党69%、民主党6%、公明党0%―。
「改正すべきだが、具体的な憲法の内容も一緒に議論すべきだ」(高い順)=自民党27%、民主党19%、みんなの党17%、日本維新の会15%、公明党11%―。
「改正すべきだ(合計)」(高い順)=日本維新の会98%、自民党96%、みんなの党96%、民主党25%、公明党11%―。
朝日:
「自民党の改憲手続きをゆるめる主張に」=「反対」54%、「賛成」38%、「その他、答えない」8%―。
上記「反対」のうち、「1票の格差が是正されずに選ばれた議員が改憲の提案するのは」=「問題だ」64%、「問題ではない」32%―。
上記「賛成」のうち、「1票の格差が是正されずに選ばれた議員が改憲の提案するのは」=「問題だ」44%、「問題ではない」51%―。
2紙のスタンスの違い
2紙のスタンスの違いが明確な調査です。読売は、国会議員が「改憲勢力」と「護憲勢力」に二分され、「改憲勢力」に勢いがあることを強調。「改憲」の端緒として憲法改正手続きを定めた96条が争点化していることを印象づけています。
一方の朝日は、通常の電話調査ではなく、あえて郵送法を取りました。電話法では開示しない年代別の回答率も示されました。年代別にほぼ均等に回答しています。自民党による改憲手続き変更の動きに反対する声が多いことを示し、「1票の格差」問題を出し、そもそも国会議員が憲法改正を議論することの適格性を問うています。
憲法の位置づけ
憲法の基本的位置づけは、「国家の行動を制約するもの」です。立法府の国会議員が自分たちを規制する最高位の規範を、「半数以上の賛成」で改定できるようにすることには、慎重であるべきだと考えます。
理由は、日本の政治環境の特殊性(あるいは未成熟)にあります。重要な政治テーマは、「熟議」をし、「正確な記録」を残し、その記録を開示して「説明責任」を十分に取る必要があります。しかし日本の政治は、①熟議、②公的記録づくり、③記録の開示と説明責任―のいずれにおいても中途半端です。
物事が上記3点のような成熟した民主主義の手続きを経ず、なし崩しに決まる傾向が強い日本の政治の現実を放置したまま、憲法96条改正を先行させることは、後世に禍根を残す結果となると懸念します。
「パンドラの箱」が開くのか
日本維新の会・共同代表の橋下徹氏は、「実行できない環境の中で議論したって無責任な議論に終わってしまう。だから、発議要件を緩和し、憲法改正を夢物語から現実の話にしなければならない」と主張しています。もっともらしい意見です。しかし憲法改正が現実話にならないのは、改正手続きが最大の理由ではありません。国会議員と有権者がこの根本テーマについて、十分な対話と議論をしていないからです。
憲法改正手続きのハードルを下げることは、「パンドラの箱」を開けることになる可能性があります。「箱を開けやすくしたから、これからじっくり議論しよう」となるのか。それとも、熟議とコンセンサスを経ないまま、改憲の具体化が次々と箱から飛び出し、日本の針路を予想外に大きく変えてしまうことになるのか。
1. 【連続企画】 「自・維・み9割超、改正賛成 ~憲法考」
2. 【政府広報】 「司法予備試験1万人超」
3. 【政府広報】 「国民投票法まず結論」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
1. 【世論調査】 「反対54%、賛成38%」
2. .【政府広報】 「96条『参院選の公約』」
3. 【独自取材】 「民間『卵子バンク』スタート」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
1. 【調査記事】 「『景気回復』9割」
2. 【政府広報】 「『参院選後、改憲勢力結集』」
3. 【独自取材】 「中国で真実語れぬ 当面、米で活動」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
1. 【企業広報】 「iPS細胞で創薬」
2. 【独自取材】 「持合い株1000億円売却」
3. 【連続企画】 「シニア偏重、成長力そぐ ~働けない若者の危機」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
1. 【行政広報】 「都の新電力契約、300施設」
2. 【独自取材】 「IC乗車券使うと損?」
3. 【独自取材】 「IOC処分せず」
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)