2013.04.30 tue

新聞1面トップ 2013年4月30日【解説】歴史の直視と未来の創造

新聞1面トップ 2013年4月30日【解説】歴史の直視と未来の創造


【リグミの解説】

帝国主義の時代
 
20世紀初頭は、帝国主義の時代でした。領土や天然資源などを獲得するために、軍事力を背景に他の民族や国家を積極的に侵略することが当たり前に行われました。日本は、ロシアの南下政策が朝鮮半島に及ぶことに脅威を感じていました。武力を背景とした帝国主義の国同士の外交には限界があったと思います。日露戦争(1904~1905年)は歴史の必然であったのかもしれません。
 
もし日露戦争に負けていたら、あるいは戦争を回避しても外交で負けていたら、日本はロシアの属国になっていたのでしょうか。ロシア革命前の混乱したロシアに、そこまでの野心と余力があったかどうかは定かではありません。ただ、帝国主義とは、強い者が勝つという弱肉強食の論理であり、強国ロシアの隠された意図がどこにあるかは、当時の日本の最大の懸念のひとつであったのではないかと推察します。
 
日露戦争の勝利がもたらしたもの

開戦時のロシアと日本の戦力比較は以下の通りです。(露・日) 歩兵66万対13万、騎兵13万対1万、砲撃支援部隊16万対1万5千、工兵と後方支援部隊4万4千対1万5千、予備部隊400万対46万―(引用:Wikipedia)。
 
このような圧倒的な軍事強国を破った日本は、そこから坂道を転がり落ちるように帝国主義的な拡張政策を取りました。1910年に朝鮮半島を併合し、1932年には中国に満州国を設立。さらに対米開戦を機に南方にも一気に進出しました。
 
侵略の事実

1945年の敗戦に至る歴史を振り返ったとき、日露戦争が分岐点になったという認識をどれだけの日本人が共有しているでしょうか。弱肉強食の論理が支配する帝国主義の時代に加担した日本は、結果としてすべてを失いました。支払った犠牲はあまりに大きく、アジアへの加害の事実は隠しようがありません。
 
安倍首相は最近の国会答弁で「『侵略』という定義は学会的にも、国際的にも定まっていない」と発言しました。安倍氏は、ロシアなどの強国との地政学的な攻防のために、日本は防衛的に領土を拡張したのであり、植民地支配の意図はなかったと言いたいのでしょうか。当時の帝国主義の論理に乗った以上、自国だけではなかったにしろ、互いに侵略や支配の意図を持って政治・外交、そして軍事力を行使したことは、否定できない事実です。
 
ソ連の対日参戦とシベリア抑留

太平洋戦争末期、当時のソ連は日ソ中立条約を破棄し対日参戦しました。戦後は軍人及び民間人100万人以上がシベリアなどに抑留され、強制労働に従事させられました。5万人以上が死亡しました(参照:Wikipedia)。
 
日本の帝国主義、軍国主義の悲惨な結末のひとつが、日露戦争で日本に敗れたロシア(当時のソ連)の逆襲でした。もし敗戦国日本が、米ソ冷戦の陣取り合戦の場となっていたなら、東日本と西日本に分断され、今の朝鮮半島のような状況になっていたかもしれません。
 
日露共同声明

安倍首相はロシアを訪問し、プーチン大統領と共同声明を発表しました。53項目にわたる声明の目玉は北方領土の交渉再開と日露平和条約の締結に向けた交渉再開です。新聞各紙は、1面で安倍首相の訪露を大きく報道しています。
 
弱肉強食の論理が支配した帝国主義の時代を駆け抜けた日本。軍国主義に傾斜していった日本が、アジアで行った加害と沖縄や本土で受けた被害は、1枚のコインの表裏です。今日の東アジアの地政学的な安定を強めるために、日本はロシアと経済協力を進め、北方領土問題を解決し、日露平和条約を締結する必要があります。
 
歴史を直視する

日本は、対露政策という二国間の関係強化の視点を超えた地域戦略を明確にすべきです。その大前提として、先の戦争のすべての加害の事実と被害の事実を、「等分の目」で客観的に検証することから逃げてはいけません。被害の事実は訴えるが、加害の事実はあいまいにするから、日本は戦後の民主主義国家としての成果を正当に評価されないのです。
 
歴史を直視する姿勢を示した上で、国として正々堂々と自己の立ち位置を主張すべきです。出発点は、歴史をゆがめないことです。そして過ちを認め、二度と繰り返さない決意を表明し実行することです。すべての友好関係は、この日本の覚悟と実行の礎から始まります。歴史を直視する者が未来を創造します。
 

(文責:梅本龍夫)





1. 【政府広報】 「日露、北方領土交渉を再開」

  • ロシア訪問中の安倍首相は、プーチン大統領と53項目の合意事項をまとめた「共同声明」を発表した。日露平和条約の締結に向け、北方領土問題の解決策を探る交渉を加速する。


2. 【独自取材】 「開城撤収、7人不許可」

  • 開城工業団地の撤収を巡り、北朝鮮は撤収予定の韓国人のうち7人を、北朝鮮従業員への賃金や税金の不払い問題などを理由に不許可とした。


3. 【独自取材】 「高3桐生、10秒01」

  • 織田幹男記念国際陸上大会男子100メートル予選で、京都・洛南校3年の桐生祥秀選手が10秒01を記録した。日本歴代2位。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





1. 【政府広報】 「領土交渉加速で一致」

  • ロシア訪問中の安倍首相は、プーチン大統領と会談した。両首脳は、北方領土交渉を再開し、経済協力の拡大を通して領土交渉を加速させることで一致した。


2. 【独自取材】 「五輪招致規範、抵触か」

  • 猪瀬都知事は米ニューヨークタイムズ紙のインタビューで「イスラム諸国は互いにけんかばかりしている」と述べた。他都市の批判や比較をしないとする五輪招致規範に抵触する可能性がある。


3. 【政府広報】 「日本の防災情報技術、輸出」

  • 総務省は、日本の「緊急地震速報」や「津波警報」などの仕組みや技術をもとに、東南アジア向けの災害情報システムづくりに乗り出す。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





1. 【政府広報】 「日露、領土交渉を加速」

  • ロシア訪問中の安倍首相は、プーチン大統領と会談した。両首脳は、北方領土問題で双方が受け入れ可能な解決策を得るための交渉を加速することで合意。


2. 【政府広報】 「企業移転で地方再生」

  • 自民党は、日本経済再生本部の中間提言で、「地方再生なくして日本再生なし」を掲げる。法人税ゼロ特区や小口投資の税制優遇などを打ち出す。


3. 【独自取材】 「よちよちタイガー、大人の一歩」

  • 東武動物公園は、今年3月に生まれたホワイトタイガーの赤ちゃん4頭を慣らし公開している。同園は、ゴールデンウィーク明けに名前を公募する。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





1. 【政府広報】 「日ロ、領土交渉を加速」

  • ロシア訪問中の安倍首相は、プーチン大統領と会談した。北方領土の交渉再開を盛り込んだ共同声明を発表した。経済テコに平和条約締結を目指す。


2. 【政府広報】 「金融機関変更可能」

  • 金融庁は、少額投資非課税制度(2014年開始の日本版ISA)で、投資家が非課税となる口座を変えられるようにする方針だ。


3. 【連続企画】 「非正規放置、社会がツケ ~働けない若者の危機」

  • 20代前半の非正規雇用割合は4割を超え30年前の4倍だ。正規雇用というレールに戻るレールを敷かないと、社会保障の崩壊や出生率の低下を招きかねない。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





1. 【連続企画】 「『日本車と質で勝負』 ~攻防TPP、米国の現場から」

  • TPP参加の事前交渉で、オバマ政権は米国の自動車産業を聖域化し日本側の合意を勝ち取った。だが聖域扱いに、米国車の販売店には違和感もある。


2. 【政府広報】 「政府交渉再開で合意」

  • ロシア訪問中の安倍首相は、プーチン大統領と会談した。懸案の北方領土問題を含む平和条約締結交渉を再開することで合意した。


3. 【独自取材】 「都議選、234人立候補予定」

  • 6月23日投開票の東京都議選に234人が立候補する予定であることがわかった。前回惨敗した自民党が第一党に復党するかなど、今回の参院選の前哨戦としても注目が集まる。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 




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