2013.04.23 tue

新聞1面トップ 2013年4月23日【解説】心を成長させる仕事

新聞1面トップ 2013年4月23日【解説】心を成長させる仕事


【リグミの解説】

世界同一賃金
日本企業の成長の芽は海外にあります。グローバル化への取り組みの先頭を走る「ユニクロ」のファーストリテイリングは、2020年までに店舗数を今の4倍の4000店に増やす計画です。うち3000店が海外となります。この流れをサポートするために、同社は「世界同一賃金制度」の導入を目指しています。
 
日本の従業員も、欧米や新興国の働き手と同じ土俵で評価される仕組みによって、世界規模の競争にさらされることになります。日本の賃金レベルは相対的に高いため、日本人の生産性や付加価値が上がらなければ、「賃金のフラット化」で賃金が下がる可能性もあります。
 
米国型の賃金制度
日本企業の賃金体系は、伝統的に企業ごとに独自のもので、終身雇用(定年までの長期雇用)を前提にしてきました。仕事も異動や転勤に伴い、専門分野が変わることもあります。一方、米国などは転職を前提としており、同一の仕事であればどの会社でも基本的に同一の賃金が支払われるようになっています。ユニクロが目指しているのは、米国型の賃金体系に近いものだと思います。
 
柳井社長は、世界同一賃金の狙いは「世界各国で優秀な人材を確保する」ことにあると語っています。柳井氏が求めているのは、欧米や新興国にたくさんいるハングリー精神を持ち、激しい競争に打ち勝つ上昇志向の強い働き手です。がんばって「追い抜き車線」を疾走し、たくさん稼げるようになる人材です。
 
「成長か死か」
柳井氏は、「グローバル化は、Grow or Die(成長か、さもなくば死か)という時代。正社員でいる以上、効率を上げ、がんばってもらわないと生き残っていけない」と明言しています(朝日新聞)。これは、従来の一般的な米国型賃金体系に留まる考え方ではなく、むしろ高度な専門性をもったプロフェッショナル職の働き手に求めてきた考え方です。
 
経営コンサルティング会社のマッキンゼーなどでは、昔から「Up or Out(昇進か辞職か)」が原則です。「ハイ・パフォーマー」(上位2割ぐらいの能力と実績を発揮する人材)だけが生き残れる仕組みです。この考え方をライン・オペレーションの典型である小売店舗にまで適用しようとしていることが、大きな特徴です。
 
心の病の増加
朝日の記事は、「成長か死か」でユニクロ店舗などの現場への要求が高まり、若手社員がサービス残業を強いられたり、うつ病になり職場を去る事例が相次ぎ、離職率が高まっている問題を指摘しています。就活生の間では、ファーストリテイリングを「ブラック企業」とする声もあり、柳井氏もそのことを問題視しています(参照:日経NBO「甘やかして世界で勝てるのか~ファーストリテイリング・柳井正会長が若手教育について語る」)。
 
経営コンサルタンティング会社の働き手や、ユニクロなどで経営幹部を目指す高度な専門性を持ったプロフェッショナル職は、「成長か死か(昇進か辞職か)」に耐えられます。なぜかというと、ある職場で成功しなくても、転職市場で新たなチャンスを見つけられるからです。しかし、ライン・オペレーションの仕事で、燃え尽きるほどの猛烈な働き方を求めることには無理があります。正社員として同様の仕事に再就職できるチャンスが少ない今の日本では、「成長か死か」は文字通り職業人としての生死を分ける制度になってしまう可能性があります。
 
個人の成長とは
柳井氏は、日経NBOのインタビュー記事で「人間は、仕事以外で成長する方法はないんです」と語っています。他者や社会に貢献してお金を戴く仕事というものが、素晴らしい成長の機会であることはその通りです。しかし、仕事だけに追い立てられる人生では、全人格の健全な成長は期待できません。
 
個人が生き残り競争に勝つだけの人生は、荒涼としています。個人が成長し、企業が成長し、国家が成長するとはどういうことか。勝ち残った個人が、弱い立場に落ちた個人に手を差し伸べる社会こそ、豊かで滋味ある社会です。個人の成長とは、心の成長であり、大きな心を持った人は、他者への思いやりを人一倍発揮するものです。
 
仕事以外にも、成長できる機会はいくらでもあります。どれほど経済活動がグローバル化しても、ローカルの個性や美しさはなくなりません。いや、むしろその輝きが増すとすらいえます。若者の可能性を広く活かし、全人格を涵養できる社会こそ、真に豊かな社会であると思います。
 

(文責:梅本龍夫)





1. 【政府広報】 「病院頼みの医療転換」

  • 政府の社会保障制度改革国民会議は22日、医療介護分野について主な論点をまとめた。「適切な場所で、最小の費用で」「地域全体で治し、支える医療」への転換の必要性を盛り込む。


2. 【政府広報】 「ネット個人情報収集指針」

  • 総務省は、IT産業の発展支援のため、個人情報の収集・保護に関する運用指針を作成する方針を固めた。個人情報保護の仕組みやルールを明確にする。


3. 【独自取材】 「四川地震22万人避難」

  • 四川地震発生から3日目となった22日、四川省政府によると死者は192人、行方不明者23人、負傷者1万1470人を確認した。相次ぐ余震に阻まれ、救援が遅れている。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





1. 【連続企画】 「ユニクロ、世界で賃金統一 ~限界にっぽん」

  • ファーストリテイリングの柳井社長は、「世界同一賃金」を導入する考えを明らかにした。店長候補から役員まで、成果が同じなら賃金も同じとする。


2. 【政府広報】 「国保運営、都道府県に」

  • 消費増税に伴う社会保障の改革を話し合う政府の社会保障国民会議は22日、国民健康保険の運営を市町村から都道府県に移すことで大筋一致した。


3. 【独自取材】 「全漁連の20万隻、一斉休漁を検討」

  • 全国漁業協同組合連合会は、円安による燃料費上昇を受け、5月に全国の漁船約20万隻の一斉休漁を検討している。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





1. 【連続企画】 「情報の海、探れ民意 ~政治いま ネット選挙最前線(上)」

  • 7月の参院選からのネット解禁で、各党が注目しているのが「ビッグデータ」だ。ネット上の書き込みなどを分析して民意を把握し、誰に何を訴えていくかを決め、発信していく。


2. 【政府広報】 「給付奨学金、大学生も」

  • 文部科学省は、返済義務のない高校生向けの「給付型の奨学金」を大学生も対象にする方針だ。無利子の貸与型から始め、給付型に移行する。


3. 【独自取材】 「『96条改正、3年で結論』」

  • 日本維新の会の橋下徹共同代表は22日、憲法96条の改正は「三権から独立した『憲法改正国民会議』を作り議論すべきだ」と述べ、3年程度かけ国民投票の実施を目指すとした。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





1. 【独自取材】 「生保・年金マネー、外債へ」

  • 国内の生命保険会社は、日本国債の購入を増やしてきた運用方針を見直し、外国債券の投資を増やす。日銀の金融緩和で長期金利が低下し運用益の確保が難しいため。


2. 【連続企画】 「転廃業支援も銀行の役割 ~金融ニッポン」

  • 中小企業金融円滑化法の終了で、銀行の役割が変わる。資金繰り視線で企業延命を手助けするのでなく、転廃業にも踏み込んだ企業再生への取り組みが求められる。


3. 【政府広報】 「国立大教員に年俸制」

  • 文部科学省は、国立大教員への年俸制と民間企業からの報酬受け取りを導入する大学教育改革プランを明らかにした。優秀な民間研究者や外国人教員を呼び込む狙いがある。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





1. 【連続企画】 「戦争防げず自責の念 ~憲法と、第1部50年代の攻防(4)」

  • 憲法学者小林直樹氏は、1950年代は「改憲派と護憲派の対立がクリアで、生々しい時代だった」「緊張関係が後退し、何となく憲法が変えられようとしている」今の状況は危険だと語る。


2. 【独自取材】 「福島第1、弱点あらわ」

  • 東京電力福島第1原発は、広範囲の不安要因がある。建屋内には、電源ケーブルや機器制御ケーブル、水の配管が乱雑に設置され、誤動作や漏電の危険がある。屋外での劣化の問題もある。


3. 【独自取材】 「道灌コーナー誕生へ」

  • 室町時代に江戸城を築いた太田道灌の関連図書を集めた「道灌文庫」が、東京都千代田区の日比谷図書文化館に25日、誕生する。子孫らが設立に尽力した。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 




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