2013.04.17 wed

新聞1面トップ 2013年4月17日 【解説】 水俣病―「闇」と「光」

新聞1面トップ 2013年4月17日 【解説】 水俣病―「闇」と「光」


【リグミの解説】

水俣病認定の最高裁判決
 
本日の新聞1面は、「水俣病認定の最高裁判決」(朝日トップ、毎日トップ、読売2番、東京2番、日経3番)が目を引きました。最高裁が国の認定基準とは異なる独自の判断で水俣病を認定したことは、画期的だと思います。
 
3紙が掲載している社説を比較します。
 
朝日: 「水俣病の原点に戻ろう」
  • 水俣病とは、魚介類にたまったメチル水銀を摂取したことで起きる神経の病気、深刻な感覚障害が基本的な特徴だ
  • しかし政府は、感覚障害と運動失調、視野狭窄などの複数の組み合わせにこだわった
  • メチル水銀中毒患者を水俣病患者と認める原則に戻り、より広い範囲の患者を対象とした認定制度に組み直す必要がある
 
毎日: 「国は認定基準を見直せ」
  • 判決は水俣病の認定を巡る行政の手法を事実上、否定した
  • 「複数の症状」にこだわる行政の杓子定規な運用に強い警鐘を鳴らす判決だ
  • 水俣病の公式確認から56年、行政対応の失敗は明らかであり、従来の姿勢固持は人権上も許されない
 
東京: 「根本解決にはまだ遠い」
  • 最高裁の判断は、国の基準見直しにはつながらなかった点は極めて残念
  • 現行の基準ではここ10年間にわずか20人しか認定されておらず、ハードルが極めて高く、運用も硬直的だ
  • 潜在患者は20万人とも言われる。感覚障害だけでも認定する方向に行政は舵を切るべきだ
 
ユージン・スミスの写真
 
チッソが引き起こした水俣病の悲惨さを知ったのは、米国の写真家ユージン・スミス氏の写真を通してでした。1970年代初頭、今から40年ぐらい前、高校生の頃です。母親に抱かれて入浴する水俣病患者の姿を撮ったスミス氏の白黒写真は、今見ても胸に迫るものがあります。水俣病の悲惨さと母親の穏やかな微笑みに見る愛の深さ。それはまさに、「闇」(黒)と「光」(白)のコントラストです(参照:アジェ・フォト)。
 
水俣病の深い「闇」に救済の「光」を

行政を司る官僚の仕事は、ルール通りに運用することをもって良しとしています。ルールが厳格にあれば、「良否」の判断に対して行政サービスを受ける住民側の不満を抑えることができます。企業は、サービスを提供する顧客を選べますが、行政は全員が対象です。企業は選んだ顧客(=自分たちを選んでくれた顧客)の満足度を高めなければ存続できません。しかし行政は、税収を保障されているので、住民の満足度が低くても存続できます。行政に心がこもらなくなる理由です。
 
水俣病発生地域でメチル水銀を摂取し、感覚障害を起こしていれば、それは水俣病だと認定する基準に作り直す。これは国の責任です。それでも、行政の現場である自治体には裁量権が与えられます。杓子定規な運用も弾力的な運用も、窓口職員の手加減次第です。いい加減なことをしないという官僚的な倫理観と、患者救済のために何ができるかを大きな掌(たなごころ)で包むように判断する柔軟さは、両立できるでしょうか。冷静な頭と暖かい心があれば、かならずできると思います。
 

(文責:梅本龍夫)





1. 【政府広報】 「人口、最大の28万人減」

  • 総務省は16日、2012年10月1日現在の人口推計を発表した。日本の総人口は、1億2751万5000人で、前年より28万4000人減少した(0.22%減)。


2. 【司法広報】 「水俣病の認定拡大」

  • 最高裁第3小法廷は16日、熊本県に水俣病と認定されなかった水俣市の女性を水俣病と認めた2審・福岡高裁判決を支持し、熊本県の上告を棄却する判決を言い渡した。


3. 【発表引用】 「イラン南東部M7.8」

  • 米地質調査所(USGS)によると、イラン南東部サラバン近郊でM7.8の地震が起きた。パキスタンのメディアのよると、同国で少なくとも34人が死亡した。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





1. 【司法広報】 「水俣病、認定を緩和」

  • 最高裁第3小法廷は16日、熊本県が水俣病と認定しなかった患者について、国が定めた基準を満たさなくても「個別に検討して認定する余地がある」と判断し、福岡高裁判決を維持した。


2. 【独自取材】 「爆発物、高い殺傷力」

  • 米国東部ボストン市で行われたボストン・マラソンでの爆破事件で使用された爆発物に、ベアリング玉のようなものが詰められていた。殺傷能力を高める意図があったとみられる。


3. 【独自取材】 「新たな申請・提訴増加か」

  • 最高裁が水俣病の認定審査の判決で、複数の症状がなくても水俣病と認定すべきと明言したことで、国の認定基準の運用の抜本的な問題解決が求められる。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





1. 【司法広報】 「水俣病、最高裁が初認定」

  • 最高裁第3小法廷は16日、熊本県水俣市の女性遺族が水俣病の認定を求めた訴訟の上告審判決で、福岡高裁判決を支持し、同県の上告を棄却した。最高裁による初の水俣病認定となる。


2. 【独自取材】 「スーチー氏、大統領に意欲」

  • ミャンマー最大野党「国民民主連盟(NLD)」のアウンサンスーチー議長は16日、毎日新聞東京本社を訪問。「求めるものを実現するには大統領になる必要がある」と語った。


3. 【独自取材】 「テロ断定、本格捜査」

  • オバマ米大統領は16日、ボストン・マラソンでの爆破事件について「FBIがテロ行為として捜査している」と述べ、「凶悪で卑怯」な犯行と非難した。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





1. 【政府広報】 「ロシア投資へ共同基金」

  • 安倍首相による今月末のロシアを訪問で、日本企業の直接投資を支援する日露共同の基金の創設が検討されている。北方領土問題の進展に向けた環境整備とする意向。


2. 【政府広報】 「65歳以上、3000万人突破」

  • 総務省は16日、2012年10月1日時点の日本の人口推計を発表した。数値公表を開始した1950年以来初めて65歳以上の老年人口が3000万人を超えた。


3. 【司法広報】 「水俣病、初の最高裁認定」

  • 最高裁第3小法廷は16日、水俣病と認定されなかった熊本県の女性を水俣病と認定し、遺族の勝訴が確定した。女性は熊本県の手続きを経て、患者認定される。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





1. 【連続企画】 「『意見聞く会』名ばかり ~東京・小平発、政治に声を(上)」

  • 東京都内で初めて直接請求で成立した小平市の住民投票条例。条例に基づき、都道計画の是非を問う住民投票が実施される。「住民の意思を示したい」と市民グループは参加を呼び掛ける。


2. 【司法広報】 「水俣病、最高裁が初認定」

  • 最高裁第3小法廷は16日、水俣病未認定の女性患者の遺族が認定を求めた訴訟の上告審で、女性を水俣病と認定し、県の上告を棄却した。女性は県の手続きを経て正式認定される。


3. 【発表引用】 「爆弾内に散弾、殺傷力高める」

  • ボストン・マラソンでの爆破事件で、犯行に使われた爆弾に殺傷力を高めるためのベアリング玉のような散弾が多数詰められていたと複数のメディアが伝えた。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 




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