2013.04.12 fri

新聞1面トップ 2013年4月12日【解説】TPPで「食の夢」を語れるか

新聞1面トップ 2013年4月12日【解説】TPPで「食の夢」を語れるか


【リグミの解説】

TPPの農業へのマイナス効果
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加した場合に、日本の農業はどんな影響を受けるのでしょうか。政府試算では3兆円のマイナスとなっています。それでもTPPに参加するメリットが上回る理由として、輸出2兆6千億円、消費3兆円、投資5千億円で計6兆1千億円のプラスを試算。差し引き3兆円以上、GDP約0.6%の押し上げ効果があるとしています(参照:msn )。
 
本日の東京新聞は1面トップで「19道県によるTPPの農林水産業への影響の独自試算」の結果を掲載しています。減少額トップは、北海道の4762億円で47%減となります。以下、1000億円以上の減少となるのが、鹿児島県1372億円、宮崎県1254億円、茨城県1174億円、栃木県1088億円、千葉県1069億円、岩手県1015億円です。
 
19道県で少なくても「半減」、ものによっては「全滅」と推計された生産物は、「コメ」「「乳製品(牛乳、バター、チーズ、脱脂粉乳)」「麦類(小麦、大麦)」「肉類(牛肉、豚肉)」「豆類」「豆類」「落花生」「サトウキビ」「サケ・マス類」「イワシ」「砂糖用テンサイ」「加工用トマト」「デンプン原料用のサツマイモ」などです。
 
日本の農業はTPP的な発想となじむのか
ひとまとめに「3兆円のマイナス」という政府試算よりも具体性があり、日本の農業が受ける打撃を実感できる内容になっています。試算にはいろいろな想定があり、本来は計算結果に幅が出るものです。また、試算を発表する側の思惑もありますから、厳し目の数字、甘目の数字というさじ加減の程度も判断する必要があります。
 
コメづくりなどの農業従事者の平均年齢は高く、国際比較の生産性も低い現状では、日本の農業の将来は明るくありません。TPPに参加しなくても、食料自給率は下がり、輸入に依存する傾向が強まっていく可能性があります。TPPによって農林水産業にプラスの効果もあるとする議論がありますが、現実はどうなのでしょうか。
 
安い輸入農産品が入ってくることで、危機感をもった農家や新規参入のビジネスが技術革新と大規模化で生産性を高めればいい。これがTPP賛成の背景にある理屈のようですが、随分乱暴な議論に思えます。土地が広大で機械化しやすい米国やオーストラリアなどに比べ、日本は限られた土地で丁寧な仕事をして農作物を作っています。日本の農業が比較優位で淘汰されたら、2度と再生できない可能性もあります。
 
都市と地方
日本は戦後に大きく都市化が進みました。「原発」も「沖縄の基地」も「農業」も、危険なものや大変なことは地方に押し付け、都市部はエネルギーや安全や豊富な食料といったメリットをもっぱら享受してきたのではないか。まったく非論理的な発想ですが、その代償のひとつが「1票の格差」だったのではないか。最近、そんなことを感じるときがあります。
 
そして戦後に忘れてしまったもの。それは戦場で人が殺し合う痛み。飢える苦しみ。都市部の住民は、空襲に怯えながら、食べ物を求めて農家に物々交換に出かけ行きました。戦後70年近く、営々と積み上げてきた平和と繁栄の礎を当たり前と思い、その不足を穴埋めする施策だけで日本の未来を安泰にしようとする発想には限界があると思います。「少子化」「高齢化」「人口減」が避けられない今、都市と地方の関係を抜本的に見直すことが最優先課題の1つではないでしょうか。
 
日本の食文化
1万4千年前の縄文土器に世界最古の調理の痕跡を発見したとする日欧の研究チームのレポートが、英科学誌「ネイチャー電子版」に掲載されました。日本の文化の根幹に「食」があるという象徴的なニュースです。ミシュランの3つ星が世界1多い東京で、おいしいものを食べることだけが「食文化」ではありません。都市から若者が田舎にどんどんJターンやIターンをし、そこでたくさんの子供たちを育てながら、新しい日本の農業を創造する。そんな未来像をどうやったら描けるのか。今必要なのは、食の夢を語れるTPP議論です。

(文責:梅本龍夫)





① 【独自取材】 「G8『北を強く非難』」

  • G8(主要8ヵ国外相会議)は11日、北朝鮮による核・ミサイル開発計画の放棄や、更なる挑発行為の自制を求める議長声明を採択した。


② 【政府広報】 「新型インフル医療、知事が指示」

  • 強毒性のインフルエンザ発生時の政府の行動計画案が明らかになった。国の「緊急事態宣言」後に都道府県知事が医師らに必要な医療行為を指示できる。医師が感染被害を受けた場合は補償する。


③ 【独自取材】 「『発射待機の状態』」

  • 北朝鮮の対韓窓口機関「祖国平和統一委員会」は、「我々の強力な打撃手段(ミサイル)は発射待機の状態で、弾頭には目標座標が精密に入力されている」と主張した。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「有権者、メール転送禁止」

  • 与野党は、インターネットを使った選挙運動運用指針を定める「ガイドライン」を作る。ガイドライン案には「有権者らが受け取ったメールを転送することはできない」と明記した。


② 【独自取材】 「G8声明、北朝鮮を非難」

  • G8(主要8ヵ国外相会議)は11日、核実験やミサイル発射準備を進める北朝鮮に対し、強く非難する議長声明を採択した。


③ 【独自取材】 「消費税還元セール『禁止おかしい』」

  • 安倍政権が「消費増税還元セール」を取り締まる法案を閣議決定したことに対し、小売業界のユニクロやイオンから政府が規制するのはおかしいとの批判の声が上がった。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【独自取材】 「G8、北朝鮮非難声明」

  • G8(主要8ヵ国外相会議)は11日、北朝鮮を「最大限の強い言葉で非難する」との議長声明を採択した。再度ミサイル発射などを行った場合は、制裁を強化することも決めた。


② 【独自取材】 「落下予測、発射数分で」

  • 政府は、北朝鮮のミサイル発射に備え、①日米の領海外に落下、②日本の領海へ落下、③米国の領海へ落下―などのケースを想定し、判断と対応をする。


③ 【企業広報】 「移送配管も漏水」

  • 東京電力は11日、福島第1原発の地下貯水槽で、汚染水の移送作業中の配管のつなぎ目部分から、新たな漏水が見つかったと発表した。つなぎ目の接続不良が原因。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【企業広報】 「日産、円安で米移管先送り」

  • 急速な円安を受けて、日産自動車は今秋以降に計画しているSUV生産の米国への全面移管を延期する。自動車大手の国内生産縮小に歯止めがかかってきた。


② 【連続企画】 「『次はアベ』世界が注視 ~異次元緩和、期待の先に(下)」

  • 世界でも突出する円安・株高に、海外からは嫉妬のまなざしも混じり始めた。通貨外交は国益をぶつけ合う世界だ。安倍政権の規制緩和を伴う成長戦略、貿易自由化、財政健全化が問われる。


③ 【独自取材】 「かんぽ新商品凍結」

  • TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加に向けた日米の事前協議の最終合意案で、米側の意向を踏まえ日本郵政のかんぽ生命保険の新商品を当面見合わせる方針だ。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「乳製品『全滅』」

  • 19の道県がTPP(環太平洋連携協定)に参加した場合の農林水産業への影響を独自試算していた。全道県で生産額が減少し、千葉、茨城、栃木では牛乳・乳製品で生計を立てられる農家がゼロになる。


② 【独自取材】 「汚染水タンク綱渡り」

  • 東京電力福島第1原発の地下貯水池の汚染水を地上タンクに移すのに、今後2ヵ月間の間に3回、タンク不足の危機に見舞われることが確実となった。


③ 【企業広報】 「移送中、22リットル漏れる」

  • 東京電力は、福島第1原発の地下貯水池からポンプで汚染水を移送し始めた直後、配管の接続部から汚染水が土中に漏出したと発表した。漏出量は約22リットル。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 




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