2013.04.11 thu

新聞1面トップ 2013年4月11日【解説】痛みを伴うリアリズム

新聞1面トップ 2013年4月11日【解説】痛みを伴うリアリズム


【リグミの解説】

原発の新規制基準
原子力規制委員会が新規制基準の最終案を決めました。各紙は社説で新基準についてそれぞれの「ビュー」(見方、考え方)を提示しています。
 
読売: 「ゼロリスクにとらわれるな」
  • 内外から相次いだ「ゼロリスクを求め過ぎだ」との批判がほとんど反映されなかった
  • 「活断層が100%ない」証明を求めることはあまりに非科学的だ。米エネルギー省幹部は「日本の厳しい基準が海外に影響しかねない」と懸念を示すのはもっともだ
  • 原発停止で電力供給は綱渡りで、火力燃料費高騰で電気料金も上がっている。安全を確認した原発の再稼働は急務である
 
朝日: 「廃炉への枠組みを早く」
  • 今のままでは廃炉は進まない。政府はリスクの高い原発から閉めていくための法整備に着手すべきだ
  • 電力業界は全原発の再稼働を目指す構えを崩していない。問題は事業以外に廃炉を決定できないことだ
  • このままでは再稼働せず、廃炉にもならない「休炉」に留まり、年間1兆円以上の維持費が電力会社の体力をじりじりと奪っていく
 
毎日: 「まだ住民を守れない」
  • 原発防災計画を作っても、放射線を監視するモニタリング体制が整わなければ、絵に描いた餅だ
  • 予算不足からモニタリングポストの整備遅れの自治体もある。規制委は不備の改善を指導すべきだ
  • 規制委は原発の新規制基準を発表したが、防災体制が整わない限り、再稼働の議論などあり得ない
 
日経: 「新規制基準は原発安全向上の出発点だ」
  • 原子力規制委の新規制基準は、安全確保と早期再稼働のバランスをとった判断だ。世界最高水準の安全基準を目指し、同時に着実な審査で早期の再稼働につなげてもらいたい
  • 電力会社は基準の順守にとどまらず、より安全な原発を目指し改善し続ける姿勢が求められる
  • 安全の最終目標は国民の生命や健康を守ることであり、米国のように原発事故の伴う住民の急性死亡リスクの目標も提示すべきだ
 
東京: 「骨抜き許されぬ」
  • 原子力規制委の新規制基準は、網羅的で対策には膨大な費用がかかるため、厳格運用すれば原発の歯止めとなる
  • 新基準に適応するのは「割に合わない」とみるのが普通の感覚だが、電力会社は再稼働に前のめりになっている
  • 新基準を大飯原発に即時適応適用しないことや「5年の猶予」を一部認めるのであれば、規制委の看板倒れだ。福島第1の状況を見ても、猶予を認めるのは危機意識が甘すぎる
 
各紙の「ビュー」比較
読売は、全原発の早期再稼働を前提にしており、規制委の姿勢を「硬直的」と見ています。
 
朝日は、原発依存をできるだけ減らす立場から、廃炉の意思決定ができる仕組みを訴えています。
 
毎日は新規制基準ではなく防災基準についての社説ですが、原発周辺住民の安全確保を最優先すべきとの主張です。
 
日経新聞は、早期の全原発再稼働を目指す点では読売と同じ立場ですが、国民の安全を守る世界水準の基準と運用も求めています。
 
東京新聞は、本来の安全を求めれば原発使用は合理的でなく、福島第1の現状を見ても一刻も早く厳しい安全基準を課すべき、との立場を強調しています。
 
「核」を扱うリアリズム
武力衝突で「核兵器」と「通常兵器」の使用を峻別するのは、「核」の破壊力が桁違いだからです。そして核攻撃の応酬になれば、世界が滅亡する危機に直面することをみなが知っています。一方、原発という「核」は深刻事故の応酬はありませんが、一旦事故になればその影響は計り知れないことは、福島第1原発の現状が示す通りです。
 
原発をその他の通常の大規模施設と同じレベルで発想することはできません。一刻も早く厳格な安全基準を適用し、「継続」と「廃炉」の判断を峻別すること。その上で、継続できる原発の発電量と、今後必要となる発電量を代替手段でどう確保していくか。国家の総合エネルギー政策もまた「レジーム・チェンジ」(過去の政権判断の大転換)が必要です。それは、理想論や空論ではなく、また目の前の現実を追認し前進しようとする現状主義でもなく、痛みを伴う真のリアリズムとして戦略的に判断すべきことだと思います。

(文責:梅本龍夫)





① 【企業広報】 「汚染水すべて移送へ」

  • 東京電力は10日、全貯水槽の利用を断念し、地上の貯水タンクなどの移し替える計画を発表した。汚染水管理は綱渡りが続く。


② 【発表引用】 「北ミサイル夜間発射も」

  • 韓国国防省は10日、北朝鮮が「奇襲効果」を狙い夜間に移動式弾道ミサイルを強行発射する可能性があることを明らかにした。


③ 【政府広報】 「日台、尖閣漁業2水域」

  • 日本と台湾は10日、日台漁業会議で尖閣諸島周辺海域に関する漁業協定に調印した。17年ぶりの妥結となった。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「再稼働、半数は当面困難」

  • 原子力規制委員会は10日、原発の新しい規制基準案をまとめた。基準適合に数年かかるものもあり、原発の半数が当面再稼働できなくなる。適合できない原発は廃炉の決断を迫られる。


② 【独自取材】 「日米韓、警戒強める」

  • 日米韓の3ヵ国は、複数のミサイルを発射する兆候を見せる北朝鮮に対し警戒を続けている。偵察などの手段を総動員する。


③ 【政府広報】 「愛知、初の民営化」

  • 国土交通省は10日、地方自治体が運営する有料道路の「民営化」を愛知県で認める方針を固めた。全国初のケース。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【独自取材】 「動物実験経ず臨床」

  • 京都府立医大のチームが2004年2月、動物実験を経ずに急性心筋梗塞の患者の幹細胞を患者自身に移植する臨床試験をしていた疑いが明らかになった。同大の調査委は、「医療倫理上、重大な問題が含まれている可能性がある」と指摘。


② 【独自取材】 「正恩氏『統一へ軍備増強』」

  • 北朝鮮の金正恩第1書記は昨年6月、党幹部に対し「祖国統一は最も差し迫った課題」とし、「人民軍をより強化しなければならない」と指示していたことがわかった。


③ 【企業広報】 「地下貯水槽廃止へ」

  • 東京電力は10日、福島第1原発で放射性汚染水が漏出している問題で、地下貯水槽の汚染水をすべて地上タンクに移すと発表した。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「公共データ、民間開放」

  • 政府はIT戦略素案で、政府の保有情報を民間ビジネスに活用し、新作業を創出する仕組みの導入を明らかにした。


② 【政府広報】 「物価2%、達成に自信」

  • 日銀の黒田総裁は10日、新しい金融緩和策は「狙い通りの効果をもった」と評価し、2%の物価上昇率目標は「達成される」と強調した。


③ 【企業広報】 「汚染水、地上タンクに」

  • 東京電力は10日、福島第1原発で放射性汚染水が漏出している問題で、6月に地下貯水槽の汚染水をすべて地上タンクに移すと発表した。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【企業広報】 「汚染水、全てタンクへ」

  • 東京電力は10日、福島第1原発で放射性汚染水が漏出している問題で、地下貯水池の汚染水をすべて金属製の地上タンクに移すと発表した。今後は貯蔵地は使わない。


② 【独自取材】 「大飯、新基準に不適合」

  • 原子力規制委員会は10日、7月に施行される原発の新しい規制基準案を示した。唯一稼働中の関西電力大飯原発は、新基準の多くの項目を満たしていない。だが規制委は停止判断を避けており、大飯が例外扱いとなれば、規制委への信頼は大きく揺らぐ。


③ 【独自取材】 「日本の『聖域』容認明言せず」

  • メキシコのペニャニエト大統領は10日、TPP(環太平洋連携協定)で日本がコメなどを「聖域」として例外扱い目指している点について、例外容認について明言を避けた。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 




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