2013.04.09 tue

新聞1面トップ 2013年4月9日【解説】「原理の人」サッチャー逝く

新聞1面トップ 2013年4月9日【解説】「原理の人」サッチャー逝く


【リグミの解説】

大きな政府から小さな政府へ
18世紀に産業革命を起こした英国は、第二次世界大戦後は「揺り籠から墓場まで」と称された高福祉政策の財政負担や国有企業の不効率などにより、長期に経済が停滞する「英国病」を患っていました。当時の英国は、典型的な「大きな政府」でした。
 
1979年に英国史上初の女性首相となったマーガレット・サッチャーは、「英国病」を打破するのは市場原理であると信じ、「小さな政府」に舵を切りました。頻発していた労組のストを封じ、国営企業を民営化。さらに金融も自由化し、英国経済を復活させました。
 
サッチャー元英国首相死去
先進国型の経済再生モデルを世界に示したサッチャー元英首相が亡くなりました。本日の新聞5紙は死去の記事を大きく報道しています。各紙の報道内容(タイトル)を比較すると、サッチャー氏の功績と評価の幅を理解できます。
 
読売:
  • 1面「『鉄の女』経済再生」
  • 国際面「冷戦下、旧ソ連と対決」「『強い指導者』惜しむ」「市民ら『英に自信取り戻した』」
  • 経済面「『小さな政府』英国病克服」「民営化、ビッグバン決断」
  • 社会面「『鉄の女』柔和な笑顔 来日時、学生と交流」
 
朝日:
  • 1面「『鉄の女』英元首相」
  • 国際面「不屈の意志、世界変革 自由を信奉」「『冷戦終結もたらした』各国から追悼」
  • 社会面「『鉄の女』気品と優しさ 日本と交流」
 
毎日:
  • 1面「『鉄の女』在任11年半」
  • 総合・経済面「英経済復活へ道筋 公営企業民営化、諸外国にも影響」
  • 国際面「『強い英国』体現 冷戦終結の立役者 格差拡大、負の遺産も」
 
日経:
  • 1面「『鉄の女』小さな政府推進」
  • 国際1面「『傑出した政治家』中曽根氏 『冷戦終結に道筋』ゴルバチョフ氏」
  • 国際2面「『自由』追求、世界を先導 英国病克服に剛腕」「成長経て苦境の今 『光と影』問う声も」
 
東京:
  • 1面「英経済改革『鉄の女』」
  • 総合面「改革断行、無類の存在感 ユーモアと毒満ちた語録」「『金持ちが貧しくなっても貧乏人は貧しいまま』」
  • 国際面「英国病克服に強い指導力 『小さな政府』反発も」「フォークランド先勝で支持絶大」「東西連戦終結の橋渡し」
 
記事としては、サッチャー氏の功績のプラスとマイナスを明記した毎日、日経、東京の3紙が、読売、朝日に比してよりバランスが取れていると思います。特に、サッチャー氏の「語録」と「評伝」を載せた東京新聞は、内容が充実しています。
 
極端から極端へ
大雑把なくくりをすると、「大きな政府」の価値観は、「公正」「優しさ」「平等」となります。これに対して、「小さな政府」の価値観は、「自由」「強さ」「競争」です。どちらかが優れているということはないと思います。むしろ両方の要素のバランスが必要でしょう。
 
しかし実際の国家運営においては、一方に大きく偏ることで、10年単位の「成果」と20年単位の「問題」が発生するように見えます。その結果、再び元の方向に大きく偏るという運動を繰り返す側面があります。
 
そうは言っても、社会の価値観は変わり、テクノロジーも変化しますので、単純な昔戻りはできません。サッチャー氏は「金融ビッグバン」を推進しましたが、グローバル化した金融は「制御しがたい怪物と化してしまった」(朝日)面もあります。社会は、「過去」と「現在」を所与として「未来」に進むしかありません。
 
螺旋状の進化
サッチャー氏の性格タイプは、「改革者」と言われます。原理原則を重んじ、信じたことをトコトン推進します。その不動の意志は、大地に根差したエネルギーともいえます。神話におけるグレートマザー(大地母神)のようです。米国初の女性大統領候補と言われるヒラリー・クリントン氏や、国連難民高等弁務官として活躍した緒方貞子氏も同じタイプです。
 
硬直した社会を大きく変えるには、サッチャー氏のような「改革者」が必要という面はあります。しかし「改革者」のエネルギーはしばしば、それまでの世界と同様かそれ以上に硬直したものになります。
 
サッチャー氏の功績を見つめることは、すべてがつながるグローバル社会をどう制御していくかという重いテーマを突き付けています。ひとつの「原理」から対極の「原理」へ、スイッチする「極端から極端へ」を卒業し、複数の原理をバランスさせながら螺旋状に発展し進化していく道を模索する時代を迎えていると思います。
 

(文責:梅本龍夫)





① 【政府広報】 「TPP日米事前協議、合意」

  • 日本政府は8日、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加の前提となる米政府との事前協議で大筋合意した。米政府は米議会に日本の参加を通告し、米議会は90日の通告期間を経て日本の参加を承認する方向だ。


② 【独自取材】 「サッチャー元英首相死去」

  • マーガレット・サッチャー元首相が脳卒中で死去した。87歳だった。1979年に英史上初の女性首相となり、11年半在任。20世紀以降の英国で最長の政権を維持した。市場原理を信奉した「サッチャリズム」で長期の経済低迷を打破したが、党内外に多くの敵も生んだ。


③ 【政府広報】 「iPS条件付き早期承認」

  • 政府の規制改革会議の「健康・医療」部会は、iPS(人工多能性幹細胞)などを使った再生医療について、早期実用化のための「条件・期限付き承認」制度を導入するよう求めた提言案を明らかにした。医療機器の審査の迅速化も盛り込んだ。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「黒田相場、世界リード」

  • 日本銀行の量的緩和策で円安・株高が進む「日銀相場」が世界の市場を動かし、世界の注目が集まる。日経平均株価は4年7ヵ月ぶりに1万3千円台をつけ、円相場は1ドル=100円直前までの円安となっている。


② 【独自取材】 「サッチャー氏死去」

  • 「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャー元首相が脳卒中で死去した。87歳だった。1979年に英国初の女性首相となり、3期11年半在任。小さな政府を志向する経済政策「サッチャリズム」で英国の経済再生を果たしたが、反発も招いた。


③ 【政府広報】 「節電要請、今夏見送り」

  • 経済産業省は、今夏の数値目標付きの節電要請を見送る方向だ。今以上に原発を動かさなくても全国平均で6.3%の余裕を確保できる見通し。節電意識の定着と、火力発電の増加による。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【調査記事】 「土曜授業、12都府県で」

  • 今年度、土曜授業を予定する公立小中学校がある自治体は、12都府県に上る。新学習指導要領の実施に伴い、授業時間の確保を図る。都市部では実施校が増加傾向にあるが、それ以外では文科省の動向を見守る方針で、地域間の温度差がある。


② 【独自取材】 「サッチャー元英首相死去」

  • 「鉄の女」と称されたマーガレット・サッチャー元首相が脳卒中で死去した。87歳だった。故レーガン元米大統領とともに新自由主義経済を推進。自由化と規制緩和を柱とする「サッチャリズム」を旗印に英国病の克服に取り組んだ。冷戦終結の立役者の一人でもある。


③ 【政府広報】 「中間貯蔵、現地調査へ」

  • 井上副環境相は8日、福島県樽葉町の松本町長と会談し、東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染度を保管する中間貯蔵施設の建設候補地の選定の事前調査と本格的なボーリング調査に入りたいと要請した。松本町長は会談後、調査受け入れを表明。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【独自取材】 「金利低下、起債に動く」

  • 日銀の金融緩和を受け、企業が起債に動き出した。日産とNTTは、1000億円規模の社債の発行を4月中に準備する。セブン&アイ・ホールディングスも3年ぶりに起債を検討。長期金利の低下により、先々の設備投資などをにらんだ企業の財務戦略が活発化している。


② 【独自取材】 「サッチャー元英首相死去」

  • 「鉄の女」と称されたマーガレット・サッチャー元首相が脳卒中で死去した。87歳だった。国営企業の民営化や規制緩和を進め、英国経済を再生に導いた。「小さな政府」の下での自由化政策は、他の先進国の経済改革に大きな影響を与えた。


③ 【連続企画】 「改革の好機、生かせるか ~異次元緩和、期待の先に(上)」

  • 日銀の金融緩和により日本経済に千載一遇の好機が訪れた。日銀が国債の巨大な買い手となることで、政府や民間企業が改革を通じて成長力を高める最後のチャンスを得る。政府も企業も、歴史的な日本復活シナリオの実現を望むなら、今すぐ行動することだ。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「水漏れ貯水池、継続」

  • 原子力規制委の更田委員は8日、東京電力福島第1原発における高濃度汚染水の処理水の地下貯水池から水漏れが起きた事故で、貯水池の使用継続を認める方針を明らかにした。しかし、水漏れ原因は判明していないため、新たな漏出が起きる恐れがある。


② 【独自取材】 「サッチャー元首相死去」

  • マーガレット・サッチャー元首相が脳卒中で死去した。87歳だった。英史上初の女性首相として新自由主義の経済改革を推進し、英国病を克服。日本の経済政策にも大きな影響を与えた。社会主義勢力への強硬姿勢から「鉄の女」と称された。


③ 【独自取材】 「江戸ふぃぎゅあ、今時も人気」

  • 江戸時代の生活雑貨を作る今戸焼の窯元が多かった東京都台東区今戸で、人形の型など131個が見つかった。江戸では、今日のフィギュア集めのように、今戸焼の人形収集が流行した。台東区は「古い時代の型までまとまって見つかるのは貴重」と評価する。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 




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