2013.04.02 tue

新聞1面トップ 2013年4月2日【解説】民主主義と人気主義

新聞1面トップ 2013年4月2日【解説】民主主義と人気主義


【リグミの解説】

国民栄誉賞
国民栄誉賞が長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に贈られることが決まりました。授賞理由は記事要約にある通りですが、なぜこの時期に、なぜ2人同時にという点に疑問を提起する記事
もあります。そもそも、選考基準があいまいなこの賞は、国民に広く親しまれた人であれば誰でも授賞対象になりえるイメージがあり、「あの人が選ばれるなら、なぜこの人は選から漏れるのか」といった批判も出やすいようです。政権のイメージアップや支持率向上に利用しているという批判もあります。

ファーストビューとセカンドビュー
各紙の掲載規模と視点は以下の通り:
  • 読売: 1面トップ、3面、社説、スポーツ面、社会面で大々的に報道。長嶋氏の肩書も「プロ野球読売巨人軍終身名誉監督」としています。批判の視点や異論といった「セカンドビュー」はなし。
  • 朝日: 1面2番、スポーツ面、社会面。社会面の小さな囲み記事で「野茂さんは?なぜ打者ばかり?」という記者会見での「セカンドビュー」からの質問を紹介。
  • 毎日: 1面トップ、スポーツ面、社会面。社会面のサブ記事で「なぜ、このタイミングか」と問い、「安倍政権の追い風のためと邪推する人が出てしまうだろう。栄誉賞は政治家に自由に使ってほしくない」(スポーツ評論家の玉木正之氏)、「首相の都合のよい時期に授与されている経緯があり、国民栄誉賞が安っぽくなっている。夏の参院選を見据えてのものだろう」(スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏)という「セカンドビュー」を2例紹介。
  • 日経: 社会面に記事。称賛の声の紹介のみで、「セカンドビュー」的なコメントはなし。
  • 東京: 1面2番、2面、スポーツ面、社会面で大きく報道。2面で「不透明な政権対応」「あいまい基準、疑問噴出」とタイトルを掲げ、「『そのときどきの首相の腹づもりで決まる』(政府関係者)のが実情との見方は以前からくすぶる」との「セカンドビュー」を提示。


5紙の扱いの大きさ順は、①読売、②東京、③毎日、④朝日、⑤日経―。全紙とも「ファーストビュー」(賞賛と支持の声)を前面に出していますが、その中で「セカンドビュー」(選考への異論や疑問、政権への批判など)を織り交ぜた比率でいうと、①東京、②毎日、③朝日―となります(読売、日経は「ファーストビュー」のみ)。

こうした報道テーマには、めでたい話を手放しで喜ぶ姿勢を持ちたいという思いと、冷静に事の背景や意図、課題などを見つめる視点を求める気持ちの両方があります。そう意味で、1面で事実報道、2面で批判記事、スポーツ面で大きな礼賛記事、社会面で賞賛と疑問の声を載せた東京新聞は、多面的で参考になりました。

民主主義と人気利用
民主主義は、①国民主権、②多数決、③少数意見の尊重―の3点がセットの制度だと思います。政治家や官僚や学者などが一方的に物事を決めていく社会は「国民主権」に反し
ます。逆に「多数決」を全面に出し過ぎれば「数の横暴」と「ポピュリズム(大衆迎合)」の問題が起きます。一方、「少数意見」を尊重し過ぎれば、「決められない政治」などが起きる可能性があります。

完全はありません。民意をよい形で政治に反映できる社会にするために、これから工夫すべきことがたくさんあります。多摩大学大学院教授の田坂広志氏と俳優の伊勢谷友介氏は、「英雄のいない国が不幸なのではない。英雄を必要とする国が不幸なのだ」と語り合っています(日経NBO)。

かつて原発推進のためにに多くの著名人を広告塔として使
った電力会社の事例もあります。国民栄誉賞という日本人が一番親しみを感じている名誉賞を、政権の「代理英雄」作りに利用させない視点(「セカンドビュー」)は必要です。民主主義と人気主義は似て非なるものなので。

(文責:梅本龍夫)







【記事要約】 ① 【政府広報】 「長嶋・松井師弟に栄誉賞」

  • 菅官房長官は1日、長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に対して国民栄誉賞を同時授与すると発表した。「国民に夢や希望を与えた」とし、「2人が師弟関係であることから判断した」と明らかにした。


② 【発表引用】 「新型出生前診断始まる」

  • 日本医学会は1日、新型出生前診断について15の認定施設を公表した。検査の意味を理解してもらうため、染色体の病気や検査の内容を説明する遺伝カウンセリング体制の充実した施設に限定した実施となる。


③ 【政府広報】 「胆管がん、強制捜査へ」

  • 厚生労働省は、胆管がんの発症者が集中している大阪市の印刷会社「SANYO-CYP」について、労働安全衛生法違反容疑で強制捜査に乗り出す方針を固めた。従業員らが相次いで胆管がんを発生したのに同社が見逃したことを重視。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「宿った命、理解するため」

  • 1日から新型の出生前診断が始まった。妊婦の血液検査で胎児のダウン症などの染色体異常がわかる。複数の医療機関で妊婦が遺伝カウンセリングを受けた。遺伝カウンセラーは、「気持ちは揺れ動くもの。きちんと理解して自分たちで結論を出してもらえるよう、とことんつきあいます」と語る。


② 【政府広報】 「長嶋・松井氏に国民栄誉賞」

  • 安倍政権は1日、長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に対して国民栄誉賞を授与すると発表した。安倍首相は、「長嶋さんは何と言っても戦後の最高のスーパースターだ。松井さんは日米でともに愛された野球選手だ」と語った。


③ 【独自取材】 「民主、維新と共闘断念」

  • 民主党は1日、参院選での日本維新の会との選挙協力を断念する方針を決めた。「『自助・自立』が前面に出た維新は、『ともに生きる社会』をめざす民主と対極」であること、「戦後日本の在り方を徹底批判する憲法の考え方」が異なることが理由。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「長嶋、松井氏、国民栄誉賞」

  • 政府は1日、長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に対して国民栄誉賞を授与すると発表した。元横綱・大鵬の納谷幸喜氏に続く22、23例目となる。同時授与は、1984年の俳優・長谷川一夫氏と冒険家・植村直己氏以来。


② 【政府広報】 「メタン埋蔵量、3年で把握」

  • 政府の総合海洋政策本部は1日、「海洋基本計画」の原案を公表した。「メタンハイドレート」(次世代のエネルギー資源)やレアアース(希土類)の埋蔵量を今後3年程度で調査・把握することを柱とする。


③ 【政府広報】 「宇宙ごみの監視、空自レーダーで」

  • 防衛省は、「宇宙ごみ」(スペースデブリ)から人工衛星を守るため、ミサイル防衛(MD)用レーダーを活用した監視を強化する検討に入った。宇宙ごみは、最近の人工衛星打ち上げ増加などで急増している。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「産業再生へ企業減税」

  • 甘利経済財政・再生相は1日、医療などの成長分野で新たな法人減税を検討すると表明した。政府は起業や事業再編で経済をテコ入れする方針を打ち出しており、法人減税は起業のさらなる新陳代謝を促す柱となる。


② 【企業広報】 「大手20社で職業体験」

  • 大手企業約20社が共同で、自社施設の大学1年生を招く職業体験の場「キャリア大学」を提供する。パナソニック、三井物産、三井住友銀行、日本マイクロソフト、日立製作所、野村ホールディングス、JTB、資生堂などが参加する。


③ 【連続企画】 「サーバー製造、日曜大工式 ~ネット・人類・未来」

  • 米フェイスブックは、ネットでつながる世界中の人々のアイデアを採り入れ改良し続ける「オープン・コンピュート・プロジェクト(OCP)」で、世界最高の省エネ型サーバーを最も安いコストで実現しようと試みている。スマホでつながる世界は、企業と個人が同列となるオープンな関係だ。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「都庁舎、バブル普請」

  • 「バブルの塔」と呼ばれる都庁舎が完成から22年経ち、初めての大規模改修を行っている。2020年までに建設費のほぼ半分にあたる762億円をかける。豪華な巨大庁舎を建てた「負の遺産」がのしかかる。


② 【政府広報】 「長嶋、松井氏に授与」

  • 政府は1日、長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に対して国民栄誉賞を授与すると発表した。安倍首相は、「長嶋さんは戦後最高のスーパースター。本来ならもっと早く決定すべきだった。松井さんは日米でともに愛された選手だ」と語った。


③ 【独自取材】 「参院選も一斉提訴へ」

  • 升永英俊弁護士らのグループは、今夏行われる参院選の投開票日翌日に、全国14の高裁・高裁支部に選挙無効の一斉提訴をする方針を明らかにした。全国47選挙区すべてが対象となる提訴は衆院両院を通じて初めて。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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