2013.03.29 fri

新聞1面トップ 2013年3月29日【解説】入口の平等、出口の平等

新聞1面トップ 2013年3月29日【解説】入口の平等、出口の平等


【リグミの解説】

「0増5減」
「0増5減」って何? 衆院選の「1票の格差」問題の対策として語られてきた隠語のような数。その中味がようやくわかりかけてきました。全国に300ある小選挙区のうち、山
梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県の小選挙区数を3から2に減らすというもの。さらに17都県42選挙区の区割りを見直すことで、「1票の格差」をぎりぎり2未満に納める改定案が、政府の区割り審から出されました。この内容を読売、朝日、毎日がトップ記事、東京は2番記事、日経は3番記事で伝えています。

各紙の評価はどうでしょうか。読売と日経は、関連記事を含め、評価記事はありません。朝日は解説記事で「1人1票にはほど遠い、取り繕った案にすぎない」と批判しています。毎日は社説で「まず『0増5減』の実現を」と主張。最悪なのは与野党でもめているうちに何も是正されない事態だと指摘しています。逆に東京新聞は、「『0増5減』は弥縫策(びほうさく)に過ぎない。『1票の不平等』の抜本是正こそ急ぐべきだ」と訴えています。

選挙関連の3テーマ
このテーマは、①「1票の格差」という憲法の下の平等の保証という問題と、②「衆院の定数削減」の問題、さらに③「選挙制度改革」―の3つがからみあって収拾がつかなくな
っていると毎日新聞は指摘しています。その通りだと思います。現実主義の立場からすれば、「0増5減」を優先して最高裁の合憲判断の最低限のラインである格差2未満にまず収めなければ、選挙制度問題は何も先に進まないと判断するのもよく理解できます。

ただ、「格差2未満」に収まればぎりぎりセーフという発想が気になります。2未満なら格差はないということにならないのは、誰にとっても明らかな事実です。1.998倍というから、なんとなく2人よりは低いというイメージになりますが、有権者にしてみれば元々2人分の投票権があったわけではないので、選挙権はあくまでも1人1票とすれば、格差とは1.998の逆数の0.5005こそがこの問題を端的に表わした数字といえます。鳥取や高知などの有権者が「1人1票」投じられるのに対して、首都圏などでは「1人0.5票」しか投じられない半人前の有権者扱いされているということです。問題は何も解決されていないと言えます。

入り口と出口
世の中には、「入口の平等」を保証すべきことと、「出口の平等」を図るべきことがあります。「入口の平等」は、選挙権や教育を受ける権利、性別や思想信条、出自などに
よって差別を受けないこと、何か新しいことにチャレンジするチャンスを与えらることなどがあります。そうした権利をどう行使し、どんな成果を上げるかはその人次第なので、結果の不平等は出ます。

多様性を活かし、新しいことにチャレンジする社会には、「入り口の平等」が重要なルールになります。これに対して「出口の平等」は、生存権
など最低限の生活などを保障するものになります。「出口の平等」があることで、チャレンジして失敗した人や、元々チャレンジできない理由のある人々も、ある程度安心して生きていくことができます。

最低限のライン
「入り口の平等」を過度に図ると、社会が停滞する可能性があると考える人々がいます。強い者、能力やアイデアのある者にチャンスを優先的に与えた方が、社会全体が活性化
されるという発想です。しかしその結果、格差が大きくなりすぎると、「出口の平等」がないがしろにされ、社会が荒んできます。国民主権の民主主義の国では、「平等」の問題は、どんな社会を創造したいかという理念や価値観に直結するテーマです。現実主義だけでは対応できない理由です。

理想主義としては、限りなく「1人1票」の「入り口の平等」に近づけるべきと考えます。その対比の現実主義としては、「1票の格差」は1.5人未満(逆数では0.67人以上)が最低限の目標になります。首都圏で地方の1人分には至らないが3分の2は超えている。それが最低限の納得ラインです。

(文責:梅本龍夫)





① 【政府広報】 「1票格差1.998倍」

  • 衆院選挙区画審議会(区割り審)は28日、小選挙区の区割り改定案をまとめ、安倍首相に勧告した。全国300小選挙区のうち17都県42選挙区の区割りを見直し、「1票の格差」を現在の最大2.524倍から1.998倍に縮小する。改定案は、山梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県の小選挙区数を3から2に減らす「0増5減」を提言。


② 【企業広報】 「パナソニック大坪会長辞任へ」

  • パナソニックは28日、前社長の大坪文雄会長の辞任を発表した。大坪氏は社長時代に経営不振を招いたプラズマテレビへの積極的投資を推進。三洋電気の買収も決めたが経営の重荷になっている。自ら辞任を申し出たもので、実質的な引責辞任となる。


③ 【企業広報】 「猿翁さんら210人『手打ち式』」

  • 歌舞伎座(東京、銀座)会場を4月2日に控え、歌舞伎俳優や関係者ら約210人による「古式顔寄せ手打ち式」が28日に行われた。本来は興行前の取り決めを確認する内輪の行事だが、今回は一般公開した。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「1票格差、1.998倍に縮小」

  • 政府の衆院選挙区画審議会(区割り審)は28日、小選挙区の区割り改定案をまとめ、安倍首相に勧告した。小選挙区定数を「0増5減」し、17都県42選挙区の区割りの線引きを見直すことで、「1票の格差」を最大1.998倍と2倍未満に納める。安倍内閣は、勧告を反映した公職選挙法改正案を国会に提出する方針。


② 【企業広報】 「NEC、携帯事業撤退」

  • NECは、2013年度中にも携帯電話の自社生産を打ち切る。開発部門は中国のレノボへの売却を目指し、携帯電話事業から事実上撤退する。NECの携帯電話の国内シェアは、2000年代前半は20%台だったが、近年は10%弱に落ち3年連続の赤字の見通し。


③ 【解説記事】 「『一人一票』にはほど遠い」

  • 最高裁が衆院選の「1票の格差」を「違憲状態」と判断してから2年後にようやくまとまった区割り見直し案は、最大格差が違憲判断の目安とされる2倍をかろうじて下回ったに過ぎない。政党間の利害が対立し、抜本的な格差是正策は先送りされている。人口の少ない地方に配慮するのも難題となっている。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「格差1.998倍に縮小」

  • 衆院選挙区画審議会(区割り審)は28日、小選挙区の区割り改定案をまとめ、安倍首相に勧告した。山梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県の小選挙区数を3から2に減らし、17都県42選挙区の区割りを見直すことで、「1票の格差」を現在の最大2.524倍から1.998倍に縮小する。


② 【連続企画】 「靖国、秋参拝に照準 ~政治いま」

  • 安倍首相は、参院選前の靖国神社は見送るが、秋の例大祭(10月17~20日)参拝に意欲を示す。参院選後の「安倍カラー」全開を期待する保守層へのメッセージを込めて、春季例大祭に「真榊(まさかき)」奉納の意向を靖国神社側に伝えた。


③ 【独自取材】 「福島産野菜、値崩れ拡大」

  • 東京都中央卸売市場における福島県産の野菜が、東日本大震災から2年目となる2012年度、1年目より大きく値崩れした。食の安全安心を回復するため、食品中の放射性セシウムの基準値を1キロ当り500ベクレルからより厳しい100ベクレルに変更したが、この1年間は風評被害が逆に強まったように見える。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【企業広報】 「株価、10銭刻みに」

  • 東京と大阪の証券取引所を経営統合した日本取引所グループは、株価を10分の1の10銭刻みに縮小する検討に入った。より細かな値動きに対応することで売買を円滑化し、国内外の投資マネーを呼び込む。来年1月に100銘柄前後に試験的に導入し、2015年半ばの本格導入を目指す。


② 【政府広報】 「法人税ゼロ特区」

  • 政府の産業競争力会議の民間議員は、外国企業の誘致に向けた提言をまとめた。提言要旨は以下の通り。▽特区の法人実行税率をゼロに、▽先端的な労働法制の導入、▽日本進出についての一元的な相談窓口の設置、▽高い能力を持った外国人の在留基準の緩和、▽移民政策を本格的に検討―。


③ 【政府広報】 「1票格差、最大1.998倍」

  • 衆院選挙区画審議会(区割り審)は28日、小選挙区の区割り改定案をまとめ、安倍首相に勧告した。全国300小選挙区のうち17都県42選挙区の区割りを見直し、「1票の格差」を現在の最大2.524倍から1.998倍に縮小する。安倍内閣は、勧告を反映した公職選挙法改正案を今国会に提出し、成立を目指す。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【連続企画】 「原発存続でも歳入激減 ~レベル7」

  • 佐賀県玄海町は財政の6割を原発関連に依存している。九州電力玄海原発の4基がすべて稼働しても、18年度には歳入の2割近い18億円が減収となる。運転開始から30年を超えているが、建替えが難しく固定資産税が減少するためだ。東京電力福島第1原発事故後、原発では地方財政が組み立てられなくなってきている。


② 【政府広報】 「1票格差、最大1.998倍に」

  • 衆院選挙区画審議会(区割り審)は28日、「0増5減」に伴う小選挙区の区割り改定案をまとめ、安倍首相に勧告した。17都県42選挙区の区割りを見直すことで、「1票の格差」を現在の最大2.524倍から1.998倍に縮小する。しかし依然として格差2倍近くの選挙区が首都圏を中心に多く、不平等が解消したとは言い難い。


③ 【政府広報】 「東京・神奈川見直し」

  • 首都圏では、東京都、神奈川県、千葉県、茨城県の10選挙区が改定案に含まれた。千葉4区は一部を分割して千葉13区に編入することなどで、「1票の格差」は2.524倍から1.851倍に縮小する。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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