【リグミの解説】
予測と予見
「未来は『予測』できない。しかし『予見』はできる」。多摩大学大学院教授の田坂広志氏が著書『未来を予見する「5つの法則」 』でそう語っています。「予測」は、何年後に具体的にこういうことが起きると推測する活動です。これに対して「予見」は、大局観をもって未来の方向性を把握する活動といえます。本日の新聞1面は、「予測」と「予見」について考えさせる記事が並びました。
人口予測
読売、朝日、日経のトップ記事が国立社会保障・人口問題研究所による「地域別将来推計人口」です。今から27年後となる2040年の日本の人口がどうなっているかを予測しています。2010年比で人口は全国平均で16%減り、65歳以上の高齢者の比率は23%から31%に増えます。すべての都道府県で人口が減少に転じるのは、「2020~25年以降」と予測しています。これは、2007年の調査で示された「2025~30年以降」よりも早まっています。
正確な時期や地域別の数値はわからなくても、「人口減」「少子化」「高齢化」が今よりも加速していくことは予見できます。生活や労働の環境などの社会構造、人々のマインドを集合的に把握すれば、このトレンドが避けられないことがわかるからです。
病気の予測
朝日の3番記事は、遺伝子情報でがんリスクを予測するという内容です。発症リスクが何割かを推定しています。一方、読売の2番記事には、家族性アルツハイマー症の検査が「陽性」だと、親が認知症になったほぼ同じ年齢で発症するとあります。こちらは発症リスクが限りなく高い状況です。予測ははずれるかもしれませんが、リスクを知ることで生活習慣や人生の優先順位を変えることはできます。
運命と宿命
「予測」は、客観的なデータのひとつに過ぎません。当るかもしれませんし、はずれるかもしれません。しかし「予見」は、遅かれ早かれ起きることを教えてくれる知恵とも言えます。ひとつのデータに判断を下すことで、情報としての価値が生まれます。情報を組み合わせれば、状況の全体観を把握する知識が得られます。そして知識の背後にある大きな構造や法則などまで直観することで、知恵が与えられます。知恵は生き方に影響を与えるものです。予見とは予測を知恵のレベルまで高めたものともいえます。
生き方の知恵
「予測」と「予見」に対比できるものとして、「運命」と「宿命」が考えられます。「運命」は変化しますが、「宿命」は変えられません。「人は必ず死ぬ」。これは誰もが予見できることで、宿命と言えます。いつ死ぬか予測できなくても、いつか死ぬという宿命をよく知ることで、人間に深い知恵が与えられ、生き方が変わります。そのことで運命も変わります。社会全体も同じです。予測データを予見に生かす知恵を集合的に持つことで、社会全体がより良い方向に進化していけるようになると思います。
(文責:梅本龍夫)
① 【政府広報】 「高齢化、大都市圏で加速」
- 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は27日、「地域別将来推計人口」を発表した。2040年には高齢化率(65歳以上の人口比)が全国平均で36.1%となり、全都道府県で30%を超える。2010年現在は、高齢化率の全国平均は23%。少子高齢化と人口減は、前回調査(2007年)よりも加速している。
② 【連続企画】 「未来の患者、研究に協力 ~認知症、予防と治療(1)」
- 家族性アルツハイマー病は、40、50代で発症することが多く、子供に意見する確率は50%。米国オクラホマ州のブレント・ホイットニーさん(34)は、家族性アルツハイマー病の臨床試験である研究プロジェクト「DIAN」に参加する。「多くの人が研究に参加すれば、次の世代の子供たちを助けることにつながる」と涙ながらに語る。
③ 【司法広報】 「1票の格差『違憲』14件」
- 昨年12月の衆院選の選挙無効(やり直し)を求めた全国の16件の訴訟は27日、仙台高裁秋田支部で「違憲」判決が出され、すべての判決が出そろった。内訳は、「違憲で無効」2件、「違憲だが有効」12件、「違憲状態」2件―。年内にも最高裁の最終判断が出る見通し。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【政府広報】 「高齢化、都市部で加速」
- 国立社会保障・人口問題研究所は27日、「地域別将来推計人口」を発表した。2040年には高齢者割合(65歳以上の人口比)が全国平均で36%となり、全都道府県で30%を超える。神奈川県は2010年比で高齢者割合が1.6倍になり、埼玉県、千葉県、東京都、愛知県、滋賀県で1.4倍以上となるなど、都市部で急速に高齢化が進む。
② 【司法広報】 「1票の格差『合憲』ゼロ」
- 昨年12月の衆院選の選挙無効(やり直し)を求めた全国の16件の訴訟は27日、仙台高裁秋田支部で「違憲」判決が出され、すべての判決が出そろった。内訳は、「違憲で無効」2件、「違憲だが有効」12件、「違憲状態」2件―。「合憲」はゼロだった。最高裁判決は、早ければ今秋に出る。
③ 【独自取材】 「がんリスク、遺伝子で予測」
- 英ケンブリッジ大などの研究チームは、ゲノム(全遺伝子情報)から乳房、卵巣、前立腺のがんになるリスクを予測できる遺伝子配列のわずかな違い(SNP)を特定した。配列の違いは血液検査で調べられる。健康診断の一部に導入すれば、がんリスクの高い人の生活習慣の改善などに役立てられる。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【独自取材】 「公聴会、九電が8割動員」
- 原子力委員会が2005年に佐賀市で開催した「市民公聴会」で、九州電力が社員らに動員をかけ、179人中の150人(84%)を占めていたことが判明した。質問者21人中7人が社員で、国の原子力政策大綱案を支持する発言をしていた。九電は、玄海原発再稼働の是非を問う県民説明番組での「やらせメール」と同様の対応であったと認めた。
② 【政府広報】 「後見訴訟、国が控訴」
- 政府は27日、成年後見人が付いた人は選挙権を失うと定めた公職選挙法の規定は違憲とした東京地裁判決について、東京高裁に控訴した。「今回の違憲判決が確定すると、全国各地の選挙で直ちに成年被後見人の取り扱いが混乱する」との理由。
③ 【政府広報】 「値上げ幅2ポイント圧縮」
- 茂木経産相と森消費者担当相は27日、関西電力と九州電力の電気料金値上げについて合意した。関電は申請時の平均11.88%の値上げ幅を9.7%程度、九電は8.51%を6.2%程度と、それぞれ約2ポイント程度圧縮した。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【政府広報】 「2020年、全都道府県で人口減」
- 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は27日、「地域別将来推計人口」を発表した。全都道府県で2020年から人口が減る。2040年には、7割の市区町村で人口減少率が20%以上と全国平均を上回る。同年の高齢化率(65歳以上の人口比)は、全国平均で36.1%となる。社会保障制度やインフラの見直しが課題となる。
② 【連続企画】 「『懐中電話』から『指話』へ ~ネット・人類・未来」
- 88年前の子供向け雑誌に「懐中電話」を使う小学生の絵が登場した。未来を夢見ることは変革の原動力となる。ドコモが開発する「指話」は、指環型の端末を突けた人差し指を耳の穴に入れると骨伝導で音声が伝わる。将来は身に着けるスマホが主流になる可能性が高い。
③ 【政府広報】 「IT活用、3課題指示」
- 安倍首相は、28日開催のIT戦略本部の初会合で、①ITの利活用による民間投資の促進、②医薬品ネット販売など新しいIT社会の実現、③公共データの民間開放と電子行政の推進―の3つの課題に取り組むよう関係閣僚に指示する方針だ。ITを広く社会に普及させる狙いがある。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【司法広報】 「『1票の平等』迫る」
- 昨年12月の衆院選の選挙無効(やり直し)を求めた全国の16件の訴訟は27日、仙台高裁秋田支部で「違憲」判決が出され、すべての判決が出そろった。広島高裁と同岡山支部が初の「違憲で無効」判決を出し、12高裁・高裁支部が「違憲」、2高裁が「違憲状態」。今秋にに最高裁が初の無効判決に踏み込むか注目される。
② 【行政広報】 「液状化、23区で恐れ」
- 東京都は27日、都内の地盤の液状化予測図を17年ぶりに見直し公表した。「液状化の可能性の高い地域」は、足立、葛飾、江戸川、太田、江東の5区で全体の9割を占める。23区すべてで可能性のある地域が確認された。
③ 【政府広報】 「『安全基準』やめ『規制基準』」
- 原子力規制委員会の田中委員長は、原発の規制基準の呼称を従来の「安全基準」から「規制基準」に改めると語った。東京新聞の匿名読者が「規制基準とすべきだ。基準さえ満たせば原発が安全だという誤解を生む」と指摘したことを伝えられた田中委員長は、「傾聴に値する」と応じていた。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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