2013.03.26 tue

新聞1面トップ 2013年3月26日【解説】三権分立の価値

新聞1面トップ 2013年3月26日【解説】三権分立の価値


【リグミの解説】

司法の警告
新しい職場の仕事に早く慣れようと無理を重ねた結果、風邪をこじらせました。いつまでも咳が止まらないので、総合病院の呼吸器内科に行くと「肺炎で入院が必要」との診
断。担当医に「仕事がたまっているので数日待ってほしい」と伝えたところ、「命とどちらが大事なのか」と一喝され、即入院となりました。本日の新聞1面トップを見て、20年以上前の私事を思い出しました。

読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙すべて「衆院選、初の無効判決」の司法広報記事を大きく載せています。各紙とも解説記事を併記しているのも特徴です。報道内容も解説内容もほぼ同一です。最高裁が衆院選の「1票の格差」は「違憲状態」と判断したにもかかわらず、国会が不作為を続けてきた結果、司法の堪忍袋の緒が切れました。各紙の解説の要旨を比較しました:
  • 読売: 「選挙無効カード」を切った広島高裁の背景には、「1票の格差」是正を怠った国会への司法の怒りがある
  • 朝日: 「政治家が有権者を選ぶ」倒錯した考えを続けた国会に対する司法からの強烈な警告だ
  • 毎日: 「1票の格差」を「違憲状態」とした最高裁の警告を無視し続けた国会の怠慢への鉄槌となった
  • 日経: 判決は、国会の不作為に強い警告を発するものであり、抜本的な格差是正を求め
  • 東京: 単に違憲を宣言するだけでは、国会の自浄能力を期待できないとみた司法からの期限を切った最後通告の判決だ


三権分立の精神
今回の広島高裁の判決で、ようやく司法は「警告」以上のレベルに踏み込みました。「大きすぎてつぶせない」大企業の再生計画や、電源喪失のマイナスに耐えられず安全基
準を中途半端にしたまま再稼働される原発など、現実の影響度の大きさに配慮し、「あるべき姿」にまっすぐ進めないケースはよくあります。特に大きな問題になるのが、利害得失が大きい当事者(経営難の大企業の経営者や原発の事業者、そして国会議員)が、果たして客観的に妥当な判断と行動を取れるかという問題です。

「政治家が有権者を選ぶ」という朝日の表現は、国会議員が自らの基盤を危うくする制度改革に踏み込めない矛盾を端的に表わしています。原発の安全基準作りと基準を満たしているかの評価を、原発事業者である電力会社と、原発推進の立場を取る行政や政治から独立させる試みとなった原子力規制委員会は、少なくても過去の組織よりは機能しつつあるように見えます。「1票の格差是正」も第3者委員会で審議し、抜本的な改革案を提示しない限り、「投票価値の平等」は実現しない懸念があります。

民主主義の命
まだ大丈夫、こちらを優先しなければ、と惰性で動いているうちに、一番大事なことをないがしろにしたツケが一気に回ってくる。私が病気から学んだ貴重な教訓でした。医
者の「警告」で即日入院を決断できたのは、「命」と「片づけなければならない仕事」の軽重を「見える化」されたからでした。信頼できるプロの見立てに信頼を置いたことも大きかったと思います。

病気の診断と治療のプロである医者も、自分自身のこととなると、「医者の不養生」という諺があります。

法律というルールづくりのプロである国会も、自分を縛るルール作りには対応できていません。国会議員は、三権分立の精神を実行した司法の判断を「民主主義の命」を問うものと受け止め、即刻応える義務があります。

(文責:梅本龍夫)







① 【司法広報】 「衆院選、初の無効判決」

  • 広島高裁は25日、昨年12月の衆院選について広島1区、2区の選挙無効(やり直し)を求めた訴訟で、両区の選挙を「違憲で無効」とする判決を言い渡した。無効判決の効力は、今年11月27日に生じるとする。国政選挙を無効とする判決は戦後初めて。広島県選管は上告する見通し。


② 【連続企画】 「原発穴埋め、年3兆円 ~NIPPON甦れ」

  • 大震災前に日本の電源の約30%を担っていた原発。現在は火力がこの穴を埋めているため、年間約3兆円多く原油・天然ガスの調達費が発生している。モノづくりや農業の国際競争力の強化では補えないレベルの貿易収支赤字となっている。原発の維持や廃炉のために、技術と人材は放棄できない。


③ 【解説記事】 「『違憲審査権の軽視』に怒り」

  • 広島高裁が「選挙無効」のカードを切った背景には、司法の怒りがある。国会は、「違憲状態」とした最高裁の判決の選挙区割りのまま衆院選を行った。最高裁判決で格差是正が「喫緊の課題」となったのに、定数削減を巡って紛糾した国会を「もはや憲法上許されない」と痛烈に批判した。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【司法広報】 「衆院選、初の無効判決」

  • 広島高裁は25日、昨年12月の衆院選について広島1区、2区の選挙無効(やり直し)を求めた訴訟で、両区の選挙を「違憲、無効」とする判決を言い渡した。ただ、直ちに無効とはせず、区割り改定作業開始1年後の今年11月26日を過ぎた段階で無効とする「将来効判決」となった。広島県選管は上告する見通し。


② 【解説記事】 「一票が暴いた危機 ~座標軸」

  • 政治は今、豊かさより負担の配分に取り組まなければならない。であればなおさらえ、有権者の政治的平等が重要となる。将来世代に負担を先送りする問題に対して、選挙権年齢を引き下げる国もある。「政治家が有権者を選ぶ」という倒錯した考えを続ければ、政治への信頼という民主主義の土台が蝕まれる。


③ 【政府広報】 「日EUのEPA,来月初交渉合意」

  • 安倍首相は25日、EU(欧州連合)のファンロンパイ首脳会議常任議長、バローゾ欧州委員長と電話協議し、日本とEUのEPA(経済連携協定)の締結に向けた第1回交渉を4月に開催することで最終合意した。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【司法広報】 「衆院選無効判決」

  • 広島高裁は25日、昨年12月の衆院選について広島1区、2区の選挙無効を求めた訴訟で、両区の選挙を「違憲で無効」とする判決を言い渡した。混乱回避のため、今年11月26日まで猶予する「将来効判決」とした。広島選管は上告する見通し。


② 【政府広報】 「日EU交渉、来月開始」

  • 安倍首相は25日、EU(欧州連合)のファンロンパイ欧州理事会常任議長、バローゾ欧州委員会委員長と電話協議し、日本とEUのEPA(経済連携協定)と政治協定の交渉を4月に開催することで合意した。


③ 【解説記事】 「是正へ国会待ったなし」

  • 憲政史上初の「国政選挙無効判決」は、最高裁の警告を無視し続けた国会の怠慢への鉄槌となった。選挙無効が確定した場合の影響は計り知れない。国会は、根本的な選挙制度改革と共に、選挙無効が確定した場合に備え、選挙のやり直しの方法も議論すべきだ。準備の時間は限られている。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【司法広報】 「昨年の衆院選、一部無効」

  • 広島高裁は25日、昨年12月の衆院選について、小選挙区の区割りを「違憲」と判断し、広島1区、2区の選挙を「無効」とする判決を言い渡した。混乱回避のため、今年11月26日まで効力を猶予する。判決は、国会の不作為に強い警告を発するものであり、抜本的な格差是正を求めた。


② 【政府広報】 「農地維持へ交付金」

  • 自民党は、政府によるTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加表明を受け、農家への新たな交付金制度の導入検討に入った。農地を適切に維持する5年以上の計画を作成した農家に対し、農地面積に応じた交付金を支給する方向となる。


③ 【企業広報】 「インテリジェンスを買収」

  • 人材サービス2位のテンプホールディングスは、6位のインテリジェンスホールディングスを買収する。米投資ファンドKKRから全株式を買い取る。負債を含む買収総額は、700億円前後となる見込み。人材サービス1位のリクルートホールディングスを追い上げる。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【司法広報】 「昨年の衆院選『無効』」

  • 広島高裁は25日、昨年12月の衆院選について、小選挙区の区割りを「違憲」と判断し、広島1区、2区の選挙を「無効」とする判決を言い渡した。混乱回避のため、衆院選挙区画定審議会が改定作業を再開してから1年となる今年11月26日まで効力を猶予する。


② 【解説記事】 「自浄力なき国会に最後通告」

  • 期限を切った最後通告の判決だ。半世紀に及ぶ「1票の格差」訴訟で、選挙無効は回避されてきた。この寸止めが国会の甘い考えを許す一因となったとの批判がある。広島高裁は、「将来効判決」で一定の猶予期間を設けた。国会に残された時間は限られた。


③ 【発表引用】 「景況感、2期ぶりに改善」

  • 東京都民銀行が25日に発表した景況感調査によると、首都圏の中小企業の景況感が2期ぶりに改善した。DI値(「景気好転」の割合から「景気悪化」の割合を引いた業況判断指数)は、全産業でマイナス0.1で、昨年10月調査から3.5ポイント改善した。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ