【リグミの解説】
「モノ」から「スタイル」へ
本日の新聞1面は、「連続企画」が充実しています。読売の「モノ欲しがらぬ若者」は、物質的な豊かさの「次」がどのような場所なのか考えさせます。
便利さや快適さが一定レベルまで達した社会で、モノに対する欲求が減退しています。こうした傾向は、1980年代には既にあったように感じます。単純なモノの充実に反応しない消費者に対して、生活そのものの充実をアピールするライフスタイル提案型の企業が登場しました。ファッション(洋服や服飾雑貨)を中心に、生活雑貨や家具、ティールームなどを組み合わせ、商業施設の中に、ミニ・テーマパークのような複合店舗を展開し、消費を牽引しました。
1990年代には、次々とライフスタイル提案型のファッション企業が登場。2000年代に入ると、小売やメーカの多くが何らかのライフスタイルを提案しようとする時代になりました。読売の記事でも、伊勢丹が新宿本店をリニューアルし、ライフスタイル全般を提案する情報発信型店舗に転換を図っていることを伝えています。1997年には11.1兆円あった百貨店の売上高は、2012年には6.6兆円とほぼ半減。生き残りを賭けた業態開発が必要になっています。
世代別の消費動向を見ると、ファッションを中心に消費を牽引してきた若者世代から、よりシニアな世代に消費の主役が入れ替わりつつあるように見えます。貯蓄などの余裕が比較的あり、バブル景気も体験した40台後半より上の世代は、小売業者などが自分たちのポケットに注目し始めていることにポジティブに反応している部分もあります。特に時間的余裕が出てきた団塊世代に商機を見る動きもあります。
「そこそこでいい」
では「モノ欲しがらぬ若者」は、社会の「異端」なのか、それとも「先端」なのか。その答のヒントは、「ライフスタイル」の次を探ることで見えてくると思います。「ライフスタイル」を提案する企業の多くは、大元を欧米の生活文化に求めてきました。衣食住の洋風化が定着した世の中で、それは自然なことでした。1980年代にはまだ舶来信仰も健在でした。その感覚や嗜好性は、シニア世代の中では継続している部分もあります。でも若者は、日本の中にすべてが存在する、と感じていると思います。
同時に、バブル崩壊後の「失われた20年」しか体験していない若者(厳密には40代前半以下)は、経済が成長するとはどういうことか実感を持てず、社会の閉塞感が強まる中、所得が限られることもあり、「そこそこでいい」と自己抑制するようになりました。朝日新聞は、「さとり世代」と呼ばれる若者の様子を記事にしています(朝日デジタル3月18日)。ライフスタイルを追求したかつての若者は、自己表現に積極的でしたが、「さとり世代」ではそのエネルギーも希薄に見えます。
「そこそこでいい」という若者の価値観は、実は日本社会全体を覆っている空気でもあると思います。時代の申し子である若者に、特に顕著に見えるだけではないでしょうか。その原因は、多面的に探究する必要がありますが、基本的要因として、戦後追求してきた経済発展型の「モノの充実」、その後にきた「ライフスタイルの充実」が限界にきたことがあります。「モノ」も「スタイル」も虚飾に過ぎなかった。多くの人々が薄々気づいてきていたことが、3.11であからさまにまりました。
「スタイル」から「生き方」へ
虚飾をいくら追求しても、大地が揺れ、洪水が人も物も押し流し、大火が都市を焼き尽くせば、何も残らない。天災を免れない日本は、伝統的に「諸行無常」の価値観を体感してきました。若者たちは、無意識的にしろ、そうした感覚や観念を継承していると仮定すると、「さとり世代」という表現も、意味深長に感じられてきます。「モノ」でもない、「スタイル」でもない。そんな時代に、人々に啓発をもたらすものは何か。それは、「生き方」そのものではないでしょうか。
「生き方」を問うことは、「本物」を求める思い、と言い換えてもいいかもしれません。「虚飾」の戦後に対して、「本物」を求める3.11後。もしこの単純化された比較に意味があるとしたら、「本物」とは何かを真剣に問うきっかけになることです。デフレを脱却し、経済が再生すれば、「結果オーライ」かもしれません。しかしそれでは、「日本再生」にはなりません。「モノ欲しがらぬ若者」が、「そこそこでいい」という内向きの安定志向を脱し、真剣に「本物」を探求するようになったときこそ、日本の未来が輝き出します。
(文責:梅本龍夫)
① 【連続企画】 「モノ欲しがらぬ若者 ~NIPPON甦れ」
- 30歳未満の単身会社員男性の自動車普及率は、1999年63.1%から2009年49.6%に減少。消費を牽引してきた20~30代がモノへの関心を失い、「低燃費」「草食消費」と呼ばれる。15~29歳の消費の特徴は「メリハリ化」と「総”交際費化”」。無料、安価を楽しみ、気に入ったものには出費し、仲間との交流に盛り上がる。
② 【発表引用】 「韓国に一斉サイバー攻撃」
- 韓国政府は20日、韓国の主要放送局や一部金融機関のコンピューターが一斉に障害を起こしたと伝えた。組織的なサイバー攻撃があったと判断。北朝鮮が関与した可能性があるとみている。
③ 【企業広報】 「配電盤内部に焦げ跡」
- 東京電力は20日、福島第1原発で停電が発生し使用済み核燃料プールの冷却装置などが停止した問題で、屋外の仮設配電盤に焦げた跡があり、近くにネズミのような小動物の死骸を見つけたと発表した。小動物が原因でショートし停電した可能性があるとみられている。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【世論調査】 「学校週6日制、8割賛成」
- 朝日新聞とベネッセ教育開発センター共同の小中学校保護者意識調査(6831人)で、「隔週6日制」支持57.3%、「完全週6日制」支持23.4%、合計「週6日制」支持80.7%だった。教育格差について、「所得の多い家庭の方がよりよい教育を受けられる傾向」は、「やむをえない」52.8%と、前回2008年の40.0%を大幅に上回った。
② 【企業広報】 「仮設配電盤ショートか」
- 東京電力は20日、福島第1原発で停電が発生した問題で、原因とみられる仮設配電盤で端子が焦げ、近くにネズミのような小動物の死骸が落ちていたと発表した。小動物が原因でショートし停電した可能性があるとみられている。
③ 【発表引用】 「韓国TVや銀行、システムダウン」
- 韓国政府は20日、韓国の主要放送局や一部金融機関のコンピューターが一斉にダウンしたと伝えた。警察当局は、サイバー攻撃の可能性があるとみて捜査を開始。「北朝鮮の仕業の可能性は排除できない。ただ(現時点では)判断は難しい」と述べた。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【連続企画】 「異端派、金融政策主流に ~日銀体制変革(上)」
- 安倍首相のもとで日銀総裁候補選びを進めた内閣官房参与の本田悦郎・静岡県立大教授は、官僚時代に中央銀行幹部と交流する中で、物価目標導入を拒む日銀理論は異質と認識していた。安倍首相は、浜田宏一・エール大名誉教授に自分の考えを問うた。「安倍理論は正しい」とのファクス返信に、安倍は「勝負あった」と連呼した。
② 【連続企画】 「『侵略の日、記念にならぬ』 ~イラク戦争開戦から10年」
- バグダッドのカドミヤ地区は、死者250人以上を出した多発爆弾テロ現場のひとつだ。普段の参拝客で混雑しているイスラム教シーア派の聖廟周辺は、人通りも普段の1、2割。3月20日は「侵略された日。記念にならない」と警官のオマム・ムハンマドさん。フセイン政権から解放された「4月9日」こそが記念日という考えだ。
③ 【企業広報】 「配電盤、ネズミ感電か」
- 東京電力は20日、福島第1原発で停電が発生し使用済み核燃料プールの冷却装置など9設備が停止した問題で、屋外の仮設配電盤に焦げた跡があり、近くにネズミのような小動物の死骸を見つけたと発表した。小動物が原因でショートし停電した可能性があるとみられている。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 ① 【政府広報】 「車安全基準、EUと統一」
- 日本は、自動車の認証基準(安全・環境基準)を欧州連合(EU)と共通化する。欧州基準に合わせることで、市場開放姿勢をEUにアピールする。代わりにEUに自動車関税の撤廃を求めていく。25日に交渉開始する日本とEUのEPA(経済連携協定)での重要テーマとなる見通し。
② 【連続企画】 「エネルギー自給の一歩 ~燃料電池車が変える(下)」
- JX日鉱日石エネルギーは、全国のガソリンスタンドで4割のシェアを持つが、水素ステーションでも同じ4割シェアを目指す。燃料が水素にシフトする流れは、石油会社やガソリンスタンドにとって商機となる。燃料電池車のエネルギー効率はガソリン車の約2倍と言われる。将来は「エネルギー自給国」も夢ではない。
③ 【政府広報】 「医療機器、官民で輸出」
- 政府は、日本の医療関連機器・サービスを海外に売り込む新組織を官民共同で立ち上げる。三菱重工業、ソニー、テルモなど18社が参加し、それぞれの得意製品を組み合わせ、新興国の受注などにつなげる。将来は医療機関も参加し、医療ビジネスを「オールジャパン」で提供することを目指す。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【企業広報】 「停電、ネズミ原因か」
- 東京電力は20日、福島第1原発の使用済み核燃料プールの冷却装置などが同時多発の停電で停止した問題で、屋外の仮設配電盤に焦げた跡があり、近くにネズミのような小動物の死骸を見つけたと発表した。小動物が配電盤に入り込み、端子に触れて異常電流が流れ事故に至った可能性があるとみて、さらに詳しく調べている。
② 【独自取材】 「がん患者の乳房を再生」
- 鳥取大学の中山敏准教授の研究チームは、乳がんで乳房の一部を摘出した患者に自身の幹細胞を移植する再生医療の臨床研究を行い、元の状態に近づけることに成功した。21日から始まる日本再生医療学会で発表する。
③ 【独自取材】 「『つぶやき』花盛り」
- 花見の季節を迎え、東京都内の庭園や公園の園長らが、ツイッターで開花情報の発信を競っている。日々変化する開花状況を即時で伝える効果がある。16ヵ所の園長らがつぶやき、来園を促している。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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